仙台駅 (宮城電気鉄道)

仙台駅、幻の地下駅の歴史

1925年（大正14年）、宮城電気鉄道の始発駅として、現在の仙台市青葉区中央1丁目付近の地下に誕生した仙台駅。この駅は、日本で最初の本格的な地下駅として知られています。駅のプラットホームは1面1線で、ニューヨーク市地下鉄の77丁目駅をモデルにしたとも言われるモダンで華やかなデザインでした。アーチや壁面は薄緑色や橙色で彩られ、当時の最先端の技術と美意識が融合した空間が広がっていたのです。

この地下駅は、既存の鉄道省仙台駅の線路と直交する形で東に伸びる宮城電気鉄道の路線の一部でした。仙台の市街地は国鉄仙台駅の西側に広がっていたため、利便性と将来の路線延伸を見据え、国鉄線を潜る形で地下に駅が設置されたのです。隣の東七番丁駅は地上駅であり、この仙台駅地下プラットフォームまでの地下区間はわずか130メートルから200メートル程度でしたが、この区間が日本初の地下鉄道となりました。

しかし、この地下駅は太平洋戦争中の1944年（昭和19年）、宮城電気鉄道が国有化され、仙石線と改称されたことで、鉄道省仙台駅の一部となりました。国有化後、仙石線の仙台駅と仙台東口駅の間は単線であったため、運行ダイヤのボトルネックとなり、また、経年劣化による雨漏りも目立つようになりました。1947年（昭和22年）のカスリーン台風や1948年（昭和23年）のアイオン台風では、地下プラットホームが冠水し、ポンプによる排水作業が行われたこともありました。

国体開催と地下駅の終焉

1952年（昭和27年）、宮城県、山形県、福島県での第7回国民体育大会の開催を機に、仙台駅仙石線プラットホームは改修されることになります。当時の仙台駅は線路の西側に駅舎がありましたが、国体の主要会場である宮城野原公園総合運動場が駅の東側に位置していたため、東側へのアクセス改善が求められていました。

同年6月1日、仙石線仙台東口駅と仙台駅間の営業は休止され、工事を経て9月26日、仙石線用の地上プラットホームが、旧線路のトンネル出口にあたる東六番丁と東七番丁の間に開業しました。これにより、仙台駅の東口も併設されました。宮城電気鉄道が設置した旧仙台駅地下駅と地下鉄道区間は、線路が撤去され、ホーム側に壁が設けられ、西口方面と新プラットホームを連絡する通路として再利用されました。しかし、地下駅当時のホームの一部は昭和40年代まで残存しており、旧ホーム入り口には改札口が、ホームから旧軌道敷に降りる扇形の階段が設置されていました。

この新しい仙石線用プラットホームは1面2線の行き止まり構造で、仙石線が別のルートで地下化される2000年（平成12年）まで始発駅として使用されました。その後、仙石線プラットホームがさらに移動されたことで、地下鉄道の跡であった地下通路も廃止されました。わずかな期間のみ存在した、仙台駅の地下駅は、その姿を消したのです。

この地下駅は、日本の鉄道史において重要な足跡を残しました。日本初の本格的な地下駅として、また、初の地下鉄道として、技術的な進歩を示すとともに、都市開発における鉄道の役割を象徴する存在であったと言えるでしょう。今ではその痕跡はほとんど残っていませんが、仙台駅の歴史を語る上で欠かせない存在です。

脚注

[1] 仙台市史編さん委員会, 『仙台市史』通史編8（現代1）, 仙台市, 2011年.
[2] 利府町誌編纂委員会, 『利府町誌』, 利府町, 1986年.

関連項目

* 東京メトロ銀座線 - 1927年（昭和2年）開業。日本初の地下鉄として知られる。

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