代替コルク

ワインボトルにおける代替コルク

ワインボトルにおける代替コルクとは、伝統的なコルク栓の代替として、ワインボトルを封をするために使用される栓のことです。従来のコルク栓を使用した場合に発生する可能性のある「ブショネ」と呼ばれる、トリクロロアニソール（TCA）という化合物による劣化を防ぐために、ワイン生産者が品質管理の一環として導入を進めています。

代替コルクを巡っては、スクリューキャップの支持者と天然コルクの支持者の間で論争が繰り広げられていますが、主な論点は「瓶詰め後のワインの熟成に化学的な差が生じるかどうか」という点です。ワイン造りにおいては瓶詰め後の変化も考慮する必要があり、栓の種類によって酸素の透過率が異なるため、ワインが消費者の手に渡るまでに味わいが変化する可能性があります。

コルク生産組合であるAPCORは、ブショネの発生率が0.7-1.2%であるという研究結果を発表しています。また、2005年の調査では、カリフォルニア州ナパ郡にあるワインスペクテーター誌の施設で行われたブラインドテイスティングにおいて、2800本のワインのうち7%でブショネが確認されました。

代替コルク登場の背景

ワインの保存にガラス瓶が一般的に使用されるようになったのは17世紀のことです。1650年頃にはコルク栓が普及しましたが、伝統的なコルク栓はコルク樫の樹皮を円筒形に打ち抜いて作られます。また、余ったコルクを粒状にし、接着剤で圧縮成形した圧搾コルクと呼ばれる栓も存在します。現在でもコルクはワインボトルの栓として広く使用されていますが、以下のような欠点があります。

コルクの漂白に使用される塩素系漂白剤とカビの反応により、2,4,6-トリクロロアニソールと呼ばれる不快臭を持つ物質が発生する可能性がある（ブショネ）。
天然素材であるため品質にばらつきがあり、高品質なコルクの調達には限界がある。低品質なコルクは、空気の遮断が不十分であったり、液漏れを引き起こすことがある。

これらの欠点を解決するために、プラスチックなどの人工素材を使用した栓や、スクリューキャップのような新しい形状の栓が開発されました。プラスチック製の合成コルクは1990年頃に登場し、1995-1996年頃から注目を集めるようになり、21世紀に入ってからは世界的に使用されるようになりました。スクリューキャップは1970年代から存在していましたが、2001年頃からニュージーランドやオーストラリアを中心に普及しました。2004年の時点で、世界のワイン出荷量のうち、76%が天然コルク（圧搾コルクを含む）、16%が合成コルク、8%がスクリューキャップを使用していました。

天然コルクの欠点を克服した代替コルクは、その使用頻度を増やしていますが、消費者の間では天然コルクに対する高級感が根強く、高級ワインへの使用は限定的です。

代替コルクの種類

合成コルク

合成コルクは、プラスチックで作られており、天然コルクに似た外観と抜き心地を持つように設計されています。TCAによる汚染のリスクがないことがメリットです。デメリットとしては、18ヶ月後には外部から空気が流入する劣化のリスクがあること、抜栓が天然コルクよりも困難であること、抜栓後に再び栓をすることが難しいことが挙げられます。ワインスペクテーター誌のジェームス・ローブは、ワインにわずかな化学物質の臭いが移ることがあると指摘しています。

天然コルクとは異なり、合成コルクの素材は生分解性を持たないことが多いですが、リサイクルが可能です。合成コルクの製造方法には、主に射出成形と押出成形の2種類があります。2007年にヴィクトル＝セガレン・ボルドー第2大学で行われた研究では、射出成形で製造された合成コルクは、天然コルクやスクリューキャップと比較して酸素の透過量が多く、ワインの酸化を防ぐ効果が低いことが示されました。

スクリューキャップ

スクリューキャップ（代表的なものにステルヴァンキャップがあります）は、アルミニウム製の栓で、ボトルの口に取り付けられます。オーストリア、オーストラリア、ニュージーランドのワイナリーでは、スクリューキャップの採用が一般的です。これらの国々でスクリューキャップが広く使用されている背景には、ニュージーランドが主導したコルク栓からスクリューキャップへの移行があります。スクリューキャップはコルクよりも気密性が高く、長期間にわたって酸素を遮断することができます。この特性により、ワインの品質を維持し、長期熟成の可能性を高めることができます。ドメーヌ・ラロッシュのミシェル・ラロッシュは、スクリューキャップを採用した理由として、ブショネの予防だけでなく、ワインの熟成、特に新鮮な香りを保つ効果を挙げています。

一方で、シャトー・オー・ブリオンで行われた実験では、スクリューキャップを使用したワインを長期間にわたって観察した結果、最初の10年間は完璧な保存状態であったものの、その後キャップ内部のプラスチックが劣化し、空気が流入したという報告があります。

ワイン専門家のジャンシス・ロビンソンは、スクリューキャップのデメリットとして、酸化とは逆の還元を指摘しています。還元によりワインの香りが抑えられ、不快なものになる可能性があります。ソーヴィニヨン・ブランは還元されやすい品種であるため、特にこの問題が発生しやすいと言えます。また、スクリューキャップは「安価なワインに使用される」というイメージが根強く、消費者が価格に関わらず、スクリューキャップのワインを低品質だと認識してしまう傾向があることもデメリットの一つです。

その他の代替コルク

VINOLOK（Vino-Sealとも呼ばれる）：プラスチックとガラス製の栓で、気密性が高く、酸化やTCA汚染を防ぐことができますが、コストが高いという課題があります。

ゾーク（Zork）：スティルワイン用の代替コルクで、スクリューキャップのように気密性を保ちつつ、コルクのように開けることができます。スパークリングワイン用としても使用されています。

王冠：ビール瓶などに使用される王冠も、スパークリングワインやシードルの栓として使用されることがありますが、頻度は高くありません。

代替コルクに対する批判

ワイン業界では、代替コルクの使用に対して批判的な意見も存在します。2006年3月には、スペイン政府が国内のD.O.（原産地呼称）のうち11箇所で代替コルクの使用を禁止しました。

環境保護の観点からは、ユーカリなどの商業栽培によってコルク樫の森林が失われることが懸念されています。一方、代替コルクの支持者は、天然コルク（特に圧搾コルク）が生分解性に優れているとは言えないと主張しています。

もう一度検索