以貴小伝

『以貴小伝』（いきしょうでん）は、徳川初代将軍である徳川家康から10代将軍徳川家治に至るまでの、歴代将軍の生母・側室たちの略伝を記した伝記です。

概要

全1巻で構成されており、成立年は明確にはわかっていません。しかし、内容から18世紀末期から19世紀初期に成立したと考えられています。具体的には、寛政3年（1791年）に発生した出来事（世子徳川家基の生母であるおちをの方の死亡記事）が最新の情報として記載されている一方、文政元年（1818年）に完成した『徳川実紀』の徳川家綱の伝記において、『以貴小伝』が典拠として採用されていることが根拠となっています。

作者については、秋山維祺（あきやまこれとき）説と竹尾善筑（たけおよしつぐ）説の2つの説が存在します。書名の由来は、『史記』高祖本紀にある「夫人所以貴者、乃此男也（夫人が貴いのは、この男子がいるからだ）」という一文から採られたと推測されています。

内容

徳川家10代将軍家治までの歴代将軍の生母、正室（御台所）、側室、合わせて46名の女性たちの出自、経歴、入内の経緯、そして彼女たちにまつわる逸話などが紹介されています。また、これらの女性たちの縁者についても言及されている点が特徴です。記述は正確であり、この種の書物としては文章も確かであると評価されています。原本は仮名書きで記述されています。

参考文献

進士慶幹「以貴小伝」（『国史大辞典 1』吉川弘文館、1979年）
小宮木代良「以貴小伝」（『日本史大事典 1』平凡社、1992年）

関連項目

* 柳営婦女伝系

『以貴小伝』は、徳川家の歴史を語る上で、特に女性たちの役割や背景を知るための貴重な史料であり、研究者や歴史愛好家にとって重要な資料となっています。

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