仮乗降場

仮乗降場とは

仮乗降場は、かつて日本国有鉄道（国鉄）に存在した、簡易的な旅客用施設です。通常の駅とは異なり、地方の鉄道管理局の判断で設置が可能でした。これは、駅を設けるほどではないものの、利用者の便宜を図る必要のある場所において、柔軟な対応を可能にするための措置でした。1969年10月1日に臨時乗降場に統一されるまでは、国鉄本社が認可した仮乗降場も存在していました。

多くは北海道内の路線に設置され、その背景には、人口密度が低く、駅間距離が長いという北海道特有の事情がありました。通学や高齢者の移動手段確保、冬季の道路交通遮断時の代替交通手段として、仮乗降場は重要な役割を担っていました。

北海道における仮乗降場の特殊性

北海道では、集落が点在し、駅を設置するほどではない地域が多く存在していました。そのため、駅間が長くなり、居住地と駅との距離が離れてしまうことがありました。このような状況を改善するため、仮乗降場が積極的に設置されました。特に1950年代中期以降、気動車の導入が進んだことで、簡素な設備で旅客扱いが可能となり、仮乗降場の設置を後押ししました。

また、信号場に併設される形で設置された仮乗降場も存在しました。これは、信号場に勤務する職員とその家族の生活をサポートするためのもので、特に人里離れた場所に信号場が設置されている場合に必要とされました。信号場併設の仮乗降場は、地域住民にとっても重要な交通手段としての役割を果たしていました。

設置基準と構造

仮乗降場の設置基準は、鉄道管理局によって異なっていました。特に旭川鉄道管理局は、他の管理局と比較して多くの仮乗降場を設置しました。これは、当時の局長の意向が大きく影響していたとされています。

仮乗降場の構造は、非常に簡素なものでした。単行の列車が停車できる程度の木製ホーム、簡単な標柱、そして小さな待合室がある程度でした。中には、朝礼台のような簡素なホームや、バスの廃車体を待合室として利用した例もありました。また、待合室すらない仮乗降場も存在しました。正規の駅に昇格した後も、これらの簡素な設備がそのまま残された例も少なくありません。

取り扱い

運賃計算

仮乗降場は、正式な駅ではないため、運賃計算に必要な営業キロが設定されていませんでした。そのため、仮乗降場で乗降する場合、運賃は隣接する駅までの営業キロで計算されていました。ただし、例外として、特定の仮乗降場は隣接する駅と同一とみなされる場合もありました。

乗車券の発売

仮乗降場から乗車する場合、基本的には車内で車掌から乗車券を購入する必要がありました。しかし、一部の利用客が多い仮乗降場では、近隣の商店などに乗車券の発売が委託されていました。乗車券には、仮乗降場の名前ではなく、運賃計算の基準となる駅名が記載されていました。ただし、ごく稀に仮乗降場の名前が記載された乗車券も存在しました。

時刻表

全国版の時刻表には、仮乗降場はほとんど掲載されていませんでした。そのため、日常的な利用者以外にとっては、突然現れる謎の駅のような存在でした。しかし、北海道版の時刻表には、多くが掲載されていました。ただし、時刻表と駅名標で名称が異なる場合や、北海道版の時刻表にさえ掲載されていない仮乗降場も存在しました。

駅名標

駅名標では、仮乗降場は隣駅として表示されないのが一般的でした。仮乗降場同士が隣接している場合でも、互いの駅名が表記されないことがありました。一部には、駅名が括弧書きで小さく表記された例もありました。

国鉄分割民営化後の仮乗降場

1987年の国鉄分割民営化により、仮乗降場は正式な駅に昇格しました。ただし、一部の仮乗降場は臨時駅として扱われるケースもありました。運賃計算や停車列車には大きな変更はなく、仮乗降場時代とほぼ同様の扱いが継続されました。その後、営業キロが設定され、より正式な駅としての扱いを受けるようになりました。

しかし、過疎化の進行により、利用客が減少したため、多くの元仮乗降場が廃止されました。特に2010年代以降は、廃止が加速しており、2021年には、JR北海道の廃止された駅の多くが、かつて仮乗降場であったという状況です。

現在の状況

現在も、かつての仮乗降場が駅として残っている場所もあります。中には、改築され、正式な駅と遜色のない外観になっている駅もあれば、仮乗降場時代の設備がそのまま残っている駅もあります。これらの駅は、当時の姿を今に伝える貴重な存在となっています。

参考文献

* 不思議な小駅"仮乗降場"について - ウェイバックマシン（2020年3月18日アーカイブ分）

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