任天堂VS.システム

任天堂VS.システムについて

任天堂VS.システム（にんてんどうブイエスシステム）は、1984年2月に任天堂によって発表されたアーケードゲーム基板です。このシステムは、当時人気のゲーム機「ファミリーコンピュータ」の構造を応用し、ファミコンゲームの移植が容易である特徴を持っています。これにより、「レッキングクルー」など、多くのゲームがVS.システムからファミコンへと移植されました。さらに、「VS.バルーンファイト」など、一部のタイトルはファミコン用とほぼ同時に開発され、ユーザーに両方のプラットフォームで楽しむ機会を提供しました。

開発背景と機能

このシステムは、任天堂が独自に開発したもので、その性能はファミリーコンピュータの本来の仕様をさらに発展させたものです。特に『VS.バルーンファイト』では、キャラクターの動きに合わせた縦スクロール機能が追加され、ゲーム体験をさらに豊かにしました。VS.システムのゲームは、任天堂だけでなく、ナムコ（現・バンダイナムコエンターテインメント）などのサードパーティーからもリリースされ、アーケード市場に多様性をもたらしました。

筐体のデザインも特徴的で、日本では対面座式の赤いボディのものが一般的でした。この筐体では、向かい合って2名が同時にプレイできる形式になっており、最大4人で楽しめるゲームも提供されました。一方、海外ではアップライトタイプの筐体が主流で、2台の筐体をハの字型に配置して相手の画面が見えないよう配慮されています。

互換性と交換システム

任天堂VS.システムは、その特性上、複数のゲームソフトを搭載することができ、ナムコ製のソフトに交換するためのボタンが供給されていました。このため、ナムコのソフトが動作している筐体では、純正のボタンではなく交換用のボタンが用いられていましたが、ナムコのソフトタイトルは主にナムコ直営店でしか享受されないことが多く、普及率は他のソフトに比べて低いものでした。

歴史的経緯

任天堂は1984年1月18日、東京支店のショールームでこのシステムを初めて披露しました。続いて、同年2月初旬に日米同時で発売され、大変な注目を浴びました。その後、1985年11月18日には特別な筐体として『VS.クルクルランド』と『VS.エキサイトバイク』の2ゲーム一体型のバージョンも発表されました。

しかし、1986年になると任天堂は家庭用ゲーム機のファミリーコンピュータが好調だった一方で、業務用ゲーム機の売上が減少していることから、アーケードゲーム事業からは撤退します。それでも、サードパーティーからの供給は続き、VS.システムの運命はしばらくの間続けられました。海外においては1990年に『VS. Dr.マリオ』が最後の新作として発売されました。

その後の展開と現在

生産終了後も、VS.システムのゲーム基板はファミコンのRGB出力改造などに利用されることが多く見られました。近年では、2016年から2017年にかけて展示会「あそぶ!ゲーム展 ステージ2：ゲームセンターVSファミコン」において、実際にVS.システムの筐体が展示され、来場者は『VS.エキサイトバイク』や『VS.アイスクライマー』などをプレイすることができました。

さらに、2017年以降、Nintendo Switch用のアーケードアーカイブスとしてVS.システムのゲームが順次配信され、2018年にはコロンバスサークルによって本機を模した対面型アーケードスタンドが発売されました。このスタンドでは、Nintendo Switchとジョイコンを使用し、オリジナルの雰囲気を再現したゲーム体験を楽しむことができます。

VS.システムは、そのユニークなアーケードゲーム体験を通じて、今もなお多くの人々に愛され続けています。

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