アーケードゲーム基板

アーケードゲーム基板：ゲームセンターの心臓部

アーケードゲーム基板とは、アーケードゲームを動かすための電子回路と部品を搭載したプリント基板、もしくはシステム全体のことで、入出力装置（ボタンやレバーなど）は含まれません。多くの場合、ゲーム業界では単に「基板」と言えば、このアーケードゲーム基板を指します。

システム基板：ゲームプログラムを載せる土台

新しいゲームごとに基板を設計するとコストがかかるため、多くのメーカーは共通の回路を持つシステム基板（マザーボード）を使用し、ゲームごとにプログラムROMなどを交換することで効率化を図っています。家庭用ゲーム機で言えば、本体がシステム基板、ゲームソフトがカートリッジやディスクに相当します。

システム基板は、高機能な基板を用いて導入コストは高めにする一方で、その後は安価なソフトウェアを供給することで利益を出す戦略が用いられることもありました。人気ゲームの場合は、基板とセットで発売した方が早いこともあり、この戦略の効果は限定的になることも多いです。大ヒット作の場合は、追加生産のコスト削減のため、不要な機能を省いた専用基板が作られることもありました。

システム基板のもう一つの利点は、ゲームの交換が簡単で安価であることです。家庭用ゲーム機に近い形態で、必ずしも高機能である必要はありません。

ゲームマシンの高度化や、違法コピー対策として基板そのものの変更が行われることもありました。新基板が登場した後でも、スペックをそれほど必要としないゲームであれば、旧基板ユーザー向けに安価なバージョンが作られることもありました。コピー対策として、ドングル（セキュリティキー）が使用されることもありました。大型筐体のゲームでは、筐体とドングルを分けて発送することで、稼働開始に間に合わせる工夫もなされていました。

初期のシステム基板はROMを直接交換する方式でしたが、後にゲーム部分をサブボードとして供給する方式、そしてROMカートリッジやCD-ROMなどを用いる方式へと進化していきました。プリントサーキットボード形式の基板を採用したゲームは、ケイブの『怒首領蜂最大往生』が最後と言われています。

互換基板：家庭用ゲーム機の技術を活用

各メーカーは、自社の得意分野を生かすため、あるいは家庭用ゲーム機との差別化のため、高性能な専用基板を設計していました。しかし、互換基板は家庭用ゲーム機の技術を活用し、性能よりも価格競争力を重視したものです。家庭用ゲーム機の性能向上により、両者の性能差は縮まりました。

SNKのNEO-GEOやMVSは、業務用と家庭用でハードウェアスペックが同一という珍しい例です。初期タイトルではセーブデータの互換性も高く、価格も業務用と家庭用で同じというケースも見られました。

1990年代前半以降、各社は独自の3DCG基板を開発しましたが、ハードウェアの複雑化と高価格化により、大型筐体での使用に限定されました。そのため、高性能で低価格な家庭用ゲーム機の3DCG技術を業務用基板に応用する動きが強まりました。アーキテクチャの共通化により、アーケードから家庭用への移植が容易になりましたが、その結果、アーケードゲーム離れとゲームセンター経営のビデオゲーム離れを招くという皮肉な結果にもつながりました。

2000年代以降は、独自設計のメリットが薄れ、PC互換機をベースとした汎用OS搭載基板が主流となりました。DVD-ROMやハードディスクからのゲーム供給が一般的になり、ネットワーク接続されたゲームでは、オンラインアップデートが広く行われるようになりました。

主な互換アーキテクチャとメーカー一覧

様々な家庭用ゲーム機が基板アーキテクチャとして利用されました。以下は、その一部です。

ファミリーコンピュータ: 任天堂VS.システムなど
セガ・マークIII: システムEなど
メガドライブ: システムC、メガドライブ互換基板など
NEO-GEO: MVS
プレイステーション: SYSTEM10/11/12（ナムコ）、ZN-1/2（ソニー）など多数
セガサターン: ST-V
NINTENDO64: Aleck64
PlayStation 2: SYSTEM246/256（ナムコ）、コナミ作品の一部など
ドリームキャスト: NAOMI/NAOMI2/SYSTEMSP（セガ）、ATOMISWAVE（サミー）
Xbox: Chihiro（セガ）
ニンテンドーゲームキューブ: トライフォース（ナムコ・セガ・任天堂）
PC/AT互換機|PC_AT互換機: WOLFシステム、Taito Type X、LINDBERGH、RINGなど多数
PlayStation 3: SYSTEM357（バンダイナムコゲームス）
Wii: Wii互換基板（カプコン）
PlayStation 4|PlayStation_4: 『ディシディア ファイナルファンタジー』など

以下に、主要メーカーと代表的な基板を一覧として示します。これは、網羅的なリストではなく、代表的なものを抜粋したものです。

IGS: PGMシステム、PGM2、PGM3
アイレクス: MACSシステム
アイレム: アイレムM62システム～M92システム
アタリ: Atari System 1～Vegas
アルゼ: AP-3
exA-Arcadia: exA-Arcadia
エクサム: eX-BOARD
エスアイエレクトロニクス: SYSTEM BOARD Y2
SNK: Multi Video System（MVS）、ハイパーネオジオ64
カネコ: AXシステム、スーパーカネコノバシステム
カプコン: CPシステム～CPシステムIII
ケイブ: CV1000
コナミ: バブルシステム～PC Basedなど多数
サミー: ATOMISWAVE
ジャレコ: メガシステム～メガシステム32
セイブ開発: SPIシステム
セガ: セガ・システム1～ALLSなど多数
セタ: Aleck64
ソニー: ZN-1/2
タイトー: SJシステム～Taito Type X4など多数
テクモ: TPS
データイースト: デコカセットシステム
ナムコ: SYSTEM 86～SYSTEM ES1など多数
任天堂: VS.システム、PlayChoice 10など
ビデオシステム: VS-Z80-7
ブレッツァソフト: クリスタルシステム
ミッドウェイ: Astrocade～V-Unitなど多数

また、アイレム、データイーストの共同開発基板（M-10、M-62、M-107）、セガ、ナムコ、任天堂のトライフォースなど、複数のメーカーによる共同開発基板も多く存在します。

この情報は、アーケードゲーム基板の歴史と技術発展の一端を示すものです。各基板の詳細については、個別の資料を参照ください。

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