伊予親王の変

伊予親王の変（いよしんのうのへん）

伊予親王の変は、平安時代の807年に発生し、皇族である伊予親王とその母・藤原吉子が政変に巻き込まれて自決に至るという重要な事件であり、その後、無罪が認められることとなります。この事件は、権力闘争の背景と皇族の運命が絡み合った日本史の一端を示しています。

経緯

伊予親王は、桓武天皇の第三皇子であり、その父から厚い寵愛を受けていました。彼の母、藤原吉子は外伯父の藤原雄友と共に朝廷内で影響力を持っていました。雄友は大納言として重職にあり、また、平城天皇とも良好な関係を築いていました。

807年5月、平城天皇が神泉苑に行幸する際、雄友は親王に献物を捧げ、宴にも参加しました。しかし、同年10月、藤原宗成が伊予親王に対して謀反をそそのかす動きがあったと藤原雄友が察知し、これを内麻呂に報告しました。察知した後、伊予親王も宗成のことを平城天皇に報告しました。

その後、朝廷は宗成を尋問しましたが、彼は逆に伊予親王が謀反の首謀者であると自白しました。この自白を受けて、平城天皇は激怒し、伊予親王と藤原吉子を捕らえ幽閉しました。二人は自身の潔白を訴えましたが、無視され、11月12日に心中することになりました。

処置

この事件の後、宗成は流刑にされ、藤原雄友も連座して流罪となりました。さらに、中納言の藤原乙叡もこの事件に関与して解任されるなど、大きな政治的変動を引き起こしました。藤原南家の影響力は、この事件によって大きく揺らぎました。

宗成が謀反を企てた裏には、藤原仲成や薬子兄妹の影響があったとも言われていますが、詳細は不明です。しかし、この事件の後に平城天皇と仲成や薬子の関係は強化され、薬子は昇進の途を歩むことになります。伊予親王とその母子の影響力は失われたものの、薬子の昇進は事件の結果により一層目立つものになりました。

この事件から3年後、薬子の変が発生し、藤原仲成は伊予親王と藤原吉子を陥れた罪で有罪とされ、処刑されます。事件の背後にある権力の動きを観察することで、当時の政治情勢が浮かび上がります。

弘仁14年、すなわち823年には、伊予親王と藤原吉子の無罪が認められ、復命と復位が行われ、彼らの墓は山陵とされました。また863年には、神泉苑において無実の罪で命を落とした人々を供養する御霊会が開かれ、藤原吉子や伊予親王母子の慰霊が行われました。

仲成は藤原吉子・伊予親王母子を陥れた罪で有罪とされたものの、姉の薬子と比べると国政に対しての影響度は低く、処刑は不当だとの見解が示されています。伊予親王の変は、主に権力闘争の結果生じた悲劇であり、平安時代の政治の複雑さを象徴しています。

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