御霊会

御霊会（ごりょうえ）とは

御霊会は、思いがけない死を迎えた者の御霊（ごりょう）を鎮め、祟りを防ぐための鎮魂儀礼です。御霊とは、本来ミタマ（霊魂）を意味しますが、特定の個人の霊が災いをもたらすという御霊信仰が背景にあります。平安時代には、不慮の死を遂げた者の死霊が怨霊へと転化し、天変地異は御霊の仕業と考えられるようになりました。

御霊会の起こり

863年（貞観5年）5月20日、神泉苑で最初の御霊会が行われました。これは、前年からの疫病流行で皇室関係者が多数亡くなったことや、藤原良房の厄年、清和天皇の元服を控えていたことが背景にあります。怨霊や疫病から天皇や周囲の人々を守る目的で始められたと考えられています。

御霊会では、『金光明経』や『般若心経』などの経典が読まれたほか、歌舞音曲や民衆参加の踊りも行われました。これは、神道的な祟り除去の目的とともに、民衆の不満や不安を和らげる効果も期待されたためと考えられます。その後、各地の寺社で同様の行事が開催され、神輿渡御や風流・田楽などの要素が加わり、旧暦の5月から8月にかけて盛んに行われるようになりました。

六所御霊と八所御霊

貞観5年の御霊会では、以下の六柱の御霊が祀られました。これらは六所御霊と呼ばれています。

崇道天皇（早良親王）
伊予親王
藤原夫人（藤原吉子）
橘大夫（橘逸勢）
文大夫（文室宮田麻呂）
観察使（藤原仲成もしくは藤原広嗣）

京都の上御霊神社と下御霊神社では、六所御霊に加えて二柱の神が祀られ、八所御霊となっています。伊予親王と観察使の代わりに、井上大皇后（井上内親王）と他戸親王が祀られています。

吉備聖霊（吉備大臣）：上御霊神社では吉備真備、吉備内親王、または鬼魅とする説があります。下御霊神社では六所御霊の和魂とされています。
火雷神：菅原道真とする説と、文字通り火雷を司る神とする説があります。上下御霊神社では六所御霊の荒魂とされています。

牛頭天王を祀る八坂神社の祇園御霊会（祇園会）は、祇園祭として広く知られています。また、火雷天神として恐れられた菅原道真を慰める天神信仰も、全国的に知られています。

その他の御霊

東大寺修二会のお水取りで朗読される神名帳には、詳細不明ながら以下の御霊の名が記されています。

八島御霊、霊安寺御霊、西寺御霊、普光寺御霊、天満天神、先生御霊、氷室御霊、木辻御霊、大道御霊、塚上御霊、葛下郡御霊。

北野天満宮では、神仏習合の儀式「北野御霊会」が行われていました。応仁の乱以降途絶えていましたが、2021年に新型コロナウイルス感染症の終息を願い、北野天満宮の神職と比叡山延暦寺の僧侶によって再興されました。

参考文献

森田悌「王朝政治」（講談社学術文庫）ISBN 978-4061596320
西本昌弘「神泉苑御霊会と聖体護持」『平安前期の政変と皇位継承』吉川弘文館、2022年 ISBN 978-4642046671

関連項目

御霊信仰
祟り神

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