伊勢錦清

伊勢錦清（いせにしき きよし）は、1902年（明治35年）2月23日、三重県三重郡朝日村小向（現在の朝日町）に生まれました。本名を井上清といい、旧姓は水谷でした。大相撲力士としては、清見潟部屋、後に出羽海部屋に所属し、1967年（昭和42年）6月20日にその生涯を閉じました。

生い立ちと入門

伊勢錦の家系は相撲と深い関わりがありました。実父の兄、つまり伯父にあたる6代清見潟・勢力忠四郎は、力士として活躍した人物でした。当初、伊勢錦の長兄が伯父の跡を継ぐ予定でしたが、病気のため断念。そこで、四男であった伊勢錦が、1919年（大正8年）5月に上京し、清見洋の四股名で初土俵を踏みました。翌年1920年5月場所10日目には新序三番出世を果たしました。

改名と昇進

1922年（大正11年）5月、伊勢錦は四股名を改め、伊勢錦となりました。さらに、1923年（大正12年）1月には三段目に昇進し、6代清見潟の未亡人の養子となり、井上姓を名乗るようになりました。これは、清見潟の名跡が代々、先代の養子によって継承されてきた慣例によるものでした。1927年（昭和2年）1月には幕下へと昇進を果たし、着実に力をつけていきました。

転籍と年寄襲名

1930年（昭和5年）3月、7代清見潟が健康上の理由で角界を去ることになり、所属していた弟子たちはそれぞれ別の部屋に移籍することになりました。伊勢錦は出羽海部屋へ転籍し、1931年（昭和6年）1月には新十両に昇進しました。しかし、この場所で3勝8敗と負け越し、翌3月も十両の地位にありましたが、出羽海の遺言により現役を引退し、8代清見潟を襲名することになりました。

通常、年寄の襲名資格は、「百七十六日全勤ノ十両格」が必要でしたが、伊勢錦の場合は、特例として認められました。これは、「十両以上ノ力士ニシテ師匠の名跡ヲ継承セントスル場合ニ限リ、理事会ノ承認ヲ経タルトキハ本文ノ制限ニヨラサルコトヲ得」という内規によるもので、十両在位1場所という異例の早さで年寄となりました。

年寄としての活動と晩年

8代清見潟を襲名した後は、出羽海部屋に所属し、後進の指導にあたりました。また、協会では勧進元を2回（1935年1月、1944年1月）、木戸部長を1944年1月場所後から1945年11月27日まで務め、協会の運営にも貢献しました。また、実業家としての才能も発揮し、6代清見潟の未亡人が経営していた待合や芸妓屋を引き継ぎ、旅館も経営していました。

1967年（昭和42年）2月22日に定年退職し、同年6月20日に脳軟化症のため亡くなりました。戒名は清見院浄譽潟榮顕道居士とされ、六本木御苑の清見潟井上家之墓に6代清見潟と共に合葬されました。

成績

十両1場所：3勝8敗

改名歴

清見洋 → 伊勢錦


伊勢錦清は、力士としてだけでなく、年寄、経営者としても多才な人物でした。彼の相撲界への貢献と、その後の活躍は、多くの人々に記憶されています。

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