伊勢電気鉄道デハニ221形電車

伊勢電気鉄道デハニ221形電車

伊勢電気鉄道デハニ221形電車は、1929年に伊勢電気鉄道（後の近鉄名古屋線の一部）が導入した、手小荷物室付きの17m級半鋼製電車です。同時期に製造されたデハニ201形・211形と同等の性能を持ちながらも、外観や機器に独自の特徴を備えています。

概要

デハニ221形は、車体の一端に手小荷物室を備えた両運転台車です。同時期の車両とは異なり、窓の上部に円弧状の飾り窓はなく、二段上昇式の窓を採用したため、外観は比較的シンプルな印象を与えます。しかし、その内部には先進的な技術が数多く採用されていました。

特筆すべきは、主電動機に東洋電機製造のTDK-528系電動機の初号機であるTDK-528-Aが搭載されたことです。TDK-528系は、その優れた性能から近隣の名古屋鉄道で高く評価され、戦後には運輸省規格形電動車の指定電動機となり、東武鉄道や東京急行電鉄など、多くの私鉄で採用されました。

制御器には、東洋電機製造製の電動カム軸式自動加速制御器、いわゆる「デッカー・システム」が採用されました。これにより、デハニ201形・211形に採用されていた電空カム軸式制御器と比較して、応答性が向上しています。

製造経緯

1929年、伊勢電気鉄道本線の四日市 - 桑名間が延伸開業し、路線距離が約49.7kmに達しました。これにより、全線直通には普通電車で1時間20分、急行電車でも1時間8分を要することになり、より大型で高速運転に適した車両が求められるようになりました。

そこで、1928年から1929年にかけて、ハ451形、デハニ211形、デハニ201形など、5両の17m級半鋼製電車が新造されました。さらに、泗桑線開業に伴う輸送需要の増加に対応するため、手小荷物室付き制御電動車の増備が計画され、デハニ221形が製造されることになりました。

車体

デハニ221形の車体は、鋼製の構体と木製の屋根・内装を組み合わせた、当時の一般的な17m級半鋼製車体です。窓の上下には補強用の細帯が巻かれ、リベット接合で組み立てられています。床下には、床下補強用のトラスロッドが装着されています。

窓は二段上昇式で、窓寸法は幅650mm、高さ850mmです。窓配置は1 3 D (1)8(1) D (1) D' 1で、手小荷物室のない側の客用扉が窓1枚分内側にずらされています。戸袋窓は全て横桟が入った褐色半透明のダイヤガラスがはめ込まれ、客用扉は東洋電機製造C-500-C戸閉装置による自動扉となっています。

内装は、天井に浅い段差のついたモニタールーフ様式で、客用扉両脇の柱頭部には花弁状の装飾が施されています。座席は全てロングシートで、窓上には真鍮製の網棚が設けられています。

主要機器

デハニ221形は、制御器に東洋電機製造製の電動カム軸式自動加速制御器を、主電動機にTDK-528-Aを搭載しています。台車は、日本車輌製造が推奨していたD-18形2軸ボギー台車を装着しています。

運用

新造後、伊勢電気鉄道の主力車として運用されましたが、デハニ231形の登場により、二線級に転落し、ローカル運用に充当されるようになりました。その後、1932年にモハニ221形に改番され、1941年にはモニ6221形に再改番されました。

近鉄への合併後も、名古屋線の各駅停車や伊勢線などで使用されましたが、1959年の名古屋線改軌に際して、一部の車両は狭軌のまま養老線に転属しました。残った車両は、台車を交換して名古屋線に残留しましたが、後に養老線に転属し、1979年までに全車廃車解体されました。

デハニ221形は、その地味な外観とは裏腹に、先進的な技術を搭載し、その後の鉄道車両に大きな影響を与えた形式です。特に、TDK-528系電動機の普及に貢献したことは、特筆に値します。

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