伊吹 (空母)

伊吹 – 大日本帝国海軍の未完成航空母艦

伊吹（いぶき）は、大日本帝国海軍の航空母艦であり、元々は改鈴谷型重巡洋艦の1番艦として起工された艦艇でした。しかし、建造の途中で航空母艦に設計変更が行われ、未完成の状態で1945年の終戦を迎えました。1946年には解体処分が決定され、1947年までにその作業が完了しました。艦名の由来は日本の名山「伊吹山」に由来し、過去には巡洋戦艦の名称としても使用されていました。

艦の設計と特徴

伊吹は重巡洋艦から航空母艦への改装に伴い、重心の上昇に対応するために船体にバルジが増設されました。また、この艦は従来の小型空母とは異なり、日本海軍としては特殊なアイランド型艦橋を採用しています。飛行甲板は長さ205m、幅23mという設計で、大型化する艦載機に対応する設計が施されていますが、このために艦橋を前方に設けることができなかったのです。

艦載機の格納庫は1層のみで、搭載できる航空機の数は限られていました。エレベーターも不足しており、わずか2基しか装備されていませんでした。改装にあたっては、艦の防御力と武装も考慮され、甲板には30-100mmの防御が施されました。

武装と搭載機

艦に搭載される予定の航空機には、零戦の後継機として開発中だった艦上戦闘機「烈風」と、艦上爆撃機「流星」がありました。軍令部からの要望では、計30機の航空機を搭載する計画でしたが、後に流星の数が減少し、最終的には27機に決定しました。

対空兵装としては、当初は九六式25mm三連装機銃が予定されていましたが、これでは不十分と判断され、長8センチ高角砲も搭載されることになりました。艦はまた、戦時中に利用される予定だった電探（レーダー）を早期から装備する計画もありました。

艦歴と運命

日本海軍は、太平洋戦争直前の1942年に、伊吹を含む重巡洋艦の建造を計画しました。しかし、ミッドウェー海戦の敗北後、主力空母を喪失したため、急遽航空母艦の建造が進められることとなり、伊吹の建造も当初の計画から変更を余儀なくされます。

1943年には空母への改造が決定されましたが、その後の進捗は遅れ続けました。工事進捗率が80%に達したところで工事は中止され、その後しばらくは港内に放置されることとなりました。最終的に「伊吹」は戦後に解体され、歴史の表舞台から姿を消しました。

この艦の歴史は、日本海軍がいかに激動の時代にあったかを象徴するものと言えるでしょう。未完成のままとなった「伊吹」の存在は、多くの計画が戦局の変化に影響され、実現できなかったことを示しています。

結論

伊吹は大日本帝国海軍にとっての一つの未完成の象徴です。重巡洋艦から航空母艦への移行は、当時の技術的、戦略的な課題を反映しており、歴史に残る艦のひとつとして記憶されています。

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