伊吹徹

伊吹徹：多彩なキャリアを歩んだ元俳優

伊吹徹（いぶきとおる）は、1940年生まれの日本の元俳優です。本名は、大丸智里。福岡県出身で、かつてはP-BOXに所属していました。関西外国語大学を中退しています。

華麗なるデビューと俳優としての転機

伊吹徹の芸能界入りは、大学時代に東宝専務の藤本真澄氏からスカウトされたことがきっかけでした。1962年、オール東宝ニュータレント第2期生としてデビュー。同期には、当銀長太郎氏や南弘子氏らがいました。デビュー作は『やま猫作戦』です。

当初は二枚目役が多かったものの、悪役を演じるようになってから、役者としての充実感を得たといいます。その端正な顔立ちから、日本人離れした役柄も演じることが多くありました。1971年の東宝の専属制度廃止後も、テレビドラマを中心に悪役として活躍を続けました。

俳優業を超えた挑戦と経験

俳優としてのキャリア以外にも、伊吹徹は様々な経験をしています。22歳の頃には、アメリカに渡り、フランク・シナトラ氏のもとで演技を学びました。2年後にはシナトラ氏からアメリカに残って俳優を続けることを勧められたものの、日本でやり残したことがあると感じ、帰国しています。この経験は、現在のビジネススタイルに繋がっていると語っています。

帰国後は、ベトナム戦争反対運動が活発に行われていた時期と重なり、自身の目で戦争の現状を見ようと、アメリカ大使館に傭兵を志願したこともあったそうです。しかし、当時リンドン・ジョンソン大統領がベトナム戦争からの撤退を表明したため、実現しませんでした。

俳優としての軌跡：映画からテレビドラマまで

伊吹徹は、数多くの映画やテレビドラマに出演し、その演技力を遺憾なく発揮しました。映画では、『ゴジラシリーズ』を始めとした特撮作品から戦争映画、アクション映画など幅広いジャンルの作品に出演しています。代表的な映画作品には、『やま猫作戦』、『青島要塞爆撃命令』、『太平洋奇跡の作戦 キスカ』などがあります。

テレビドラマでは、悪役を演じることが多く、『大岡越前』、『太陽にほえろ!』、『西部警察 PART-III』、『必殺シリーズ』などの人気番組に多数出演し、視聴者から強い印象を残しました。その他にも、『ウルトラQ』、『プレイガール』、『特命刑事』、『ザ・ハングマンシリーズ』など、様々な作品で活躍しました。

俳優引退後：新たな挑戦

俳優業を引退後は、本名である大丸智里として、水素水メーカーFDR・フレンディアの代表取締役を務めています。俳優時代とは異なる分野での活躍は、彼の多様な才能と挑戦心を物語っています。

人物像：柔道の腕前と独特のエピソード

伊吹徹の特技は柔道です。デビュー作『やま猫作戦』の上映後、観客席にいた伊吹徹にサインを求める人が殺到したというエピソードは有名です。また、暗黒街を舞台にした作品に出演していた際には、本物のヤクザから声をかけられ、喫茶店で組長と会食した経験もあります。この経験は、彼の演技に深みを与えたといいます。

伊吹徹の俳優人生は、映画やテレビドラマでの活躍だけでなく、アメリカでの研鑽や、社会運動への関与、そして俳優引退後の起業など、様々な要素が絡み合った、実に波乱に満ちたものでした。これらの経験が、現在の彼を形作っていると言えるでしょう。

参考文献

『東宝特撮映画全史』
『ENCYCLOPEDIA OF GODZILLA ゴジラ大百科 [メカゴジラ編]』
洋泉社MOOK 別冊映画秘宝
『別冊映画秘宝 モスラ映画大全』
* 友井健人 編『別冊映画秘宝 昭和メカゴジラ鋼鉄図鑑』

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