伊地知家 (男爵家)

伊地知家（いぢちけ）

伊地知家は、桓武平氏の流れを汲む伊地知氏の庶流にあたる武家・士族であり、後に華族となった日本の家です。江戸時代中期頃に薩摩藩士伊地知家から分家し、独自の家系を築きました。特筆すべきは、陸軍中将伊地知幸介の存在で、彼の軍功が認められ、華族の男爵家に列せられたことで知られています。

歴史

伊地知氏のルーツは、桓武平氏秩父氏の畠山重忠にまで遡ります。伊地知季随以降、薩摩国や大隅国に土着し、島津氏に仕える一族となりました。伊地知家は、江戸時代中期の元禄時代に分家として独立し、薩摩藩士としての歴史を歩み始めました。この家系は、明治維新まで薩摩藩に仕え続けました。

明治期には、伊地知幸介が当主を務めました。安政元年（1854年）に生まれた幸介は、明治2年（1869年）に陸軍に入隊し、ドイツ留学を経て、実践的な射撃法を導入し、日本の砲兵教育に大きく貢献しました。日清戦争では歩兵中佐として出征し、その戦功により功四級に叙せられました。その後も順調に昇進を重ね、明治39年（1906年）には陸軍中将にまで上り詰めました。日露戦争では満州軍第三軍参謀長兼旅団要塞司令官として活躍し、その功績から功二級に叙せられるとともに、明治40年（1907年）には特旨により男爵の爵位を授与されました。その後も東京湾要塞司令官や第11師団長などの要職を歴任しました。幸介の妻は二人おり、前妻は陸軍大将・元帥大山巌公爵の兄である大山彦八の長女雪子、後妻は西郷従道侯爵の養女であるキミです。

大正6年（1917年）1月23日に幸介が亡くなった後、同年2月28日に長男の伊地知精が爵位と家督を継承しました。精は明治42年（1909年）生まれで、夫人には毛利元秀子爵の長女である繁子を迎えました。昭和前期には、精が昭和製鋼所鞍山本社に勤務していた関係で、伊地知男爵家の住居は満州国鞍山南にありました。また、精の妹である梅子は、香淳皇后（昭和天皇皇后）の上席女官を務めていました。

平成前期には、精の子である伊地知正直が当主を務めており、伊地知家の住居は東京都中野区東中野にありました。

系図

系図は以下の通りです。

実線は実子、点線（縦）は養子を示します。
系図は『平成新修旧華族家系大成 上巻』に準拠しています。

（系図はテキストでは表現が難しいため、省略します。詳細については参考文献をご参照ください。）

参考文献

太田亮 著「国立国会図書館デジタルコレクション 伊地知　イチヂ」、上田, 萬年、三上, 参次 監修 編『姓氏家系大辞典』 第1巻、姓氏家系大辞典刊行会、1934年、108-109頁。
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社〈中公新書1836〉、2006年。
華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター〈日本人物誌叢書7〉、1990年。
霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成 上巻』霞会館、1996年。

関連項目

伊地知氏
伊地知家 (伯爵家)

もう一度検索