小田部雄次

小田部雄次：皇室と華族制度を解き明かす歴史学者

小田部雄次氏は、1952年生まれの日本の歴史学者であり、静岡福祉大学名誉教授です。専門は日本近現代史、中でも皇室制度と華族制度に関する研究で知られています。東京生まれ、茨城県水戸市育ちという経歴を持ち、茨城県立水戸第一高等学校を経て茨城大学人文学部を卒業。その後、立教大学大学院文学研究科博士課程に進み、単位取得後退学しています。

学問への道：日本ファシズムから皇族研究へ

小田部氏の研究は、立教大学在学中に粟屋憲太郎氏に師事し、日本ファシズム研究から始まりました。松本学の日記や安岡正篤の書簡といった一次史料を分析する中で、学習院赤化事件や革新華族の存在に注目。この経験が、後の皇室・華族研究の礎となったと言えるでしょう。

その後、研究対象は『徳川義親日記』を手がかりに華族制度史へと移行。華族財産の売却や家宝の動向に関する研究も精力的に行っています。さらに、共同通信社会部長・宮内庁記者であった高橋紘氏との出会いをきっかけに、旧皇族妃梨本伊都子妃の日記にアクセス。これにより、宮中と女性をテーマとした皇室研究へと深化を遂げました。

多角的な視点：皇室と華族に関する著作

小田部氏はこれまでに数多くの著作を発表しており、その範囲は多岐に渡ります。『徳川義親の十五年戦争』から始まり、『梨本宮伊都子妃の日記』、『華族 近代日本貴族の虚像と実像』、『天皇・皇室を知る事典』、『皇族 天皇家の近現代史』など、皇室や華族に関する歴史的事実を丁寧に解き明かした作品が多数あります。また、『昭和天皇実録評解』シリーズなど、昭和天皇に関する研究も行っており、その内容は多様な解釈を促すものとなっています。

さらに、近年の著作として『皇室と学問　昭和天皇の粘菌学から秋篠宮の鳥学まで』（2022年）や『天皇家の帝王学』（2023年）など、現代の皇室に関わる研究も精力的に行なっています。これらの著作を通して、歴史的視点と現代社会への洞察を融合させ、皇室と日本の近現代史を多角的に考察している点が特徴です。

論争を呼ぶ発言：竹田恒泰氏への批判と悠仁親王盗撮事件へのコメント

小田部氏は、保守派論客として知られる竹田恒泰氏に対し、その皇族経験について批判的な見解を示しています。竹田恒泰氏の父方の系譜を辿り、恒泰氏が一度も皇族であった事実がないことを明確に指摘しています。また、悠仁親王の盗撮被害事件に関しては、「一概に責めることはできない」というコメントを発表し、物議を醸しました。これらの発言は、歴史学者としての客観的な視点と、社会問題に対する独自の意見が混在していると言えるでしょう。

まとめ：歴史研究と社会への貢献

小田部雄次氏は、膨大な史料に基づいた緻密な研究と、独自の視点から生まれた論考によって、日本の近現代史、特に皇室制度と華族制度に関する理解を深めることに大きく貢献しています。一方で、その発言内容によっては賛否両論を巻き起こすこともありますが、彼の発言一つ一つが、歴史と社会への関心を高め、活発な議論を促す力となっていることは確かです。小田部氏の研究は、日本の近現代史を理解する上で欠かせない要素であり続けるでしょう。

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