伊奈忠次

伊奈 忠次の生涯

伊奈忠次（いな ただつぐ）は、戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将であり、初代武蔵小室藩主でもあります。彼は三河国幡豆郡小島城（現在の愛知県西尾市小島町）に生まれ、父は伊奈忠家でした。忠次は、父が三河一向一揆に加わった際に家康の下を出奔。その後、天正3年（1575年）に行われた長篠の戦いに参与し、功績を挙げて家康の元に戻ることができました。

家康の嫡男信康の家臣として再び仕官しましたが、信康が武田氏との内通の罪で自ら命を絶った後、忠次は一度また出奔し、和泉国・堺に身を寄せました。

武将としての活躍

天正10年（1582年）の本能寺の変の際、忠次は堺で家康を脱出させるために伊賀越えを成功させ、その功績により再び帰参を許されました。父の元の領地である小島を与えられ、大名としての立場を確立します。また、三遠奉行の一人として代官業務を行い、後には代官衆の首領に昇格。豊臣秀吉による小田原征伐や文禄・慶長の役では、兵站を支える兵糧の輸送や街の整備を一手に引き受け、代官としての職務を全うしました。

関東における家康の支配体制の構築に貢献し、慶長15年（1610年）に61歳で死去。その後、遺領と代官職は嫡男忠政が継承しました。大正元年（1912年）には正五位を追贈されています。

代表的な功績

伊奈忠次は、武蔵国足立郡小室（現在の埼玉県北足立郡伊奈町小室）と鴻巣から与えられた1万石の土地において、検地や新田開発、河川改修などの施策を講じました。彼は利根川や荒川の改修工事（利根川東遷・荒川西遷）を行い、江戸幕府の財政基盤を確立するのに寄与しました。彼が整備した運河や堤防は「備前渠」や「備前堤」として現在も各地に名を残しています。

その結果、忠次は水運を効果的に計り、治水を行い、江戸の繁栄に大きく寄与しました。農民たちは彼を「神様・仏様・伊奈様」と呼び、農業に関連した技術や知識の普及にも努めました。農業の発展を支援し、桑や麻、楮などの栽培技術を広めたことから、地域の農民から大いに尊敬される存在となりました。

また、伊奈町の名は忠次に由来しており、次男の忠治に因んで茨城県筑波郡にも同名の町が存在します。忠次を称える音頭歌も地域に残っており、地元文化にも影響を与えています。

系譜

伊奈忠次の家系は、父・伊奈忠家と母の不詳な出身であり、正室には深津氏があります。嫡男は伊奈忠政であり、そのほかにも子女がおり、次男は伊奈忠治です。彼の影響は子孫にも及び、地域の発展と治水改善に重要な役割を果たしました。忠次に捧げた多くの文化や信仰は、今なお人々の記憶に刻まれています。

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