幡豆郡

幡豆郡（はずぐん）とは

幡豆郡は、かつて愛知県（三河国）に存在した郡です。1878年（明治11年）に行政区画として発足し、2011年（平成23年）に消滅しました。

郡域

幡豆郡の範囲は、発足当初、現在の西尾市の大部分（米津町・南中根町・志貴野町を除く）と、額田郡幸田町の一部（野場・永野・須美・六栗・逆川・上六栗・桐山）にあたります。2010年の国勢調査によると、面積は176.59平方キロメートル、人口は163,390人でした。

歴史

古くは「播豆」「波豆」「芳豆」「芳図」「者豆」などと表記され、その由来にはいくつかの説があります。

幡頭神社説: 郡域内の式内社である幡頭（はず）神社に由来するという説。
礒泊郷説: 域内の礒泊（しはと）郷が転訛したという説。
停泊地説: 停泊地を意味する「泊（ハク）」が訛ったという説。

また、現在知多[[郡]]南知多町に属する日間賀島と篠島も、もとは三河国幡豆郡に属していました。これらの離島や、現在の碧南市も旧幡豆郡に含まれていました。奈良県の平城宮からは、「参河国播豆郡篠嶋海部供奉五月料御贄佐米楚割六斤」と記された木簡が出土しており、奈良時代からサメ、タイ、スズキ、赤魚などの楚割（すわやり、魚介類の保存食）を都に献上していたことがわかります。

特に、篠島・析島からは「佐米楚割（さめのすやわり）」と呼ばれる、鮫を日干しにして割いた珍味が朝廷に献上されていました。

消滅時には、幡豆郡内の3町で幡豆郡消防組合を組織し、消防活動を行っていました。ゴミ処理は、西尾市を含めた西尾幡豆広域連合で共同で行い、処理場は吉良町に設置されていました。

近世以降の沿革

明治初期の支配関係は複雑で、『旧高旧領取調帳』には189の村が記録されています。以下に主な変遷を記します。

慶応4年（1868年）: 幕府領や旗本領が三河裁判所の管轄となり、後に三河県、駿河府中藩、三河重原藩の管轄となる。
明治2年（1869年）: 三河県の管轄区域が伊那県の管轄となる。府中藩が静岡藩となる。
明治4年（1871年）: 廃[[藩置県]]により、藩領が西尾県、岡崎県、菊間県、重原県、静岡県の管轄となる。その後、全域が額田県の管轄となる。
明治5年（1872年）: 愛知県の管轄となる。
明治6年～明治11年（1873年～1878年）: 町村合併や新田開発が進み、現在の幡豆郡の形が形成される。
明治11年（1878年）: 郡区町村編制法の施行により、行政区画としての幡豆郡が発足。郡役所が西尾に設置。
明治22年（1889年）: 町村制施行により、1町36村が発足。
明治24年（1891年）: 郡制が施行。
明治25年～大正15年（1892年～1926年）: 一色村、横須賀村、平坂村が町制施行。町村合併が進み、郡役所が廃止。
昭和3年～昭和29年（1928年～1954年）: 幡豆村、寺津村が町制施行。西尾町が市制施行し西尾市となる。郡内の町村が周辺の市町村に編入される。
昭和30年（1955年）: 横須賀村と吉田町が合併して吉良町が発足。
平成23年（2011年）: 一色町、吉良町、幡豆町が西尾市に編入され、幡豆郡は消滅。

町村制以降の変遷

町村制以降、幡豆郡は以下のように変遷しました。

明治22年（1889年）10月1日: 町村制施行により、1町36村が発足。
明治25年（1892年）5月13日: 一色村、横須賀村が町制施行。
明治26年（1893年）11月8日: 平坂村が町制施行。
明治39年（1906年）5月1日: 町村合併により1町14村となる。
大正2年～大正15年（1913年～1926年）: 平坂村の一部が寺津村に編入。一色村、吉田村、平坂村が町制施行。郡会が廃止、郡役所も廃止。
昭和3年～昭和29年（1928年～1954年）: 幡豆村、寺津村が町制施行。室場村、平原村、花明村、家武村が合併し室場村となる。西尾町が市制施行し西尾市となる。豊坂村が額田郡幸田町と合併。佐久島村が一色町に編入。平坂町、寺津町、福地村、室場村が西尾市に編入。
昭和30年（1955年）: 三和村が西尾市に編入。横須賀村、吉田町が合併し吉良町となる。
平成23年（2011年）4月1日: 一色町、吉良町、幡豆町が西尾市に編入され、幡豆郡が消滅。

参考文献

「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典』 23 愛知県、角川書店、1989年3月8日。ISBN 4040012305。
旧高旧領取調帳データベース

関連項目

消滅した郡の一覧
* 西三河

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