伊孑志

伊孑志：武庫川のほとりに栄えた歴史と文化の町

兵庫県宝塚市に位置する伊孑志（いそし）地区は、武庫川右岸、六甲山系の山麓に広がる歴史ある地域です。行政上は大字伊孑志と1～4丁目に分かれ、地理的には分断された独特の地域構造を持っています。この記事では、伊孑志地区の豊かな歴史、地理的特徴、そして現代の姿を紹介します。

古代からの歴史と地名の由来

伊孑志の地名は、古くからこの地を治めた古代氏族、伊蘇志臣に由来すると考えられています。859年（貞観元年）の『三代実録』には、摂津守滋野朝臣貞雄が伊蘇志臣を賜ったという記述があり、伊蘇志臣がこの地を拠点としていたことを示唆しています。また、『五畿地誌』には、式内社伊和志豆神社が伊孑志地区にある伊和志津神社であると記されており、当地における伊蘇志臣と伊和志津神社の関連性が示唆されています。しかし、『摂津名所図絵』では伊和志豆神社の位置が異なっており、地名の由来や変遷については諸説があり、定説は未だ確立されていません。

地名については、「伊刀志」という表記も見られ、その由来は諸説あります。大国正美氏の説では、武庫川と仁川の合流地点における武庫川の湾曲と、上流からの土砂堆積による水害の多発を背景に、「イソ」が海岸だけでなく石の多い地形を指すこともあることから、自然地名が語源の可能性を示唆しています。

中世から近世：荘園と村落

中世には伊孑志荘という荘園が存在し、売買に関する古文書も残されています。江戸時代には武庫郡伊孑志村として幕府領と尼崎藩領を繰り返し、村高は時代によって変動しています。明治22年（1889年）の町村制施行により、良元村の大字となりました。

近代以降：温泉街の発展と都市化

明治20年代から北西部で温泉が発見され、宝塚[[温泉]]として発展しました。大正4年には宝塚として分離し、昭和29年には良元村が宝塚町と合併して宝塚市の一部となりました。その後、昭和41年から昭和50年にかけて、伊孑志地区は段階的に現在の町名に再編されました。昭和45年時点での世帯数は1,316世帯、人口は5,084人でした。

武庫川と伊孑志：乙樋、水車、渡し舟

伊孑志地区は、武庫川と深く関わってきました。伊孑志、小林、蔵人の三ヶ村共同で管理していた取水施設「乙樋」は、度重なる水害で損壊と修復を繰り返し、周辺村との紛争も引き起こしました。現在も使用されている乙樋は、地域の生活に欠かせないインフラです。

また、逆瀬川の水を利用した水車は、200年以上にわたり油絞りや米搗きなどに利用され、周辺地域の水車建設にも影響を与えた重要な産業施設でした。武庫川には橋がなく、渡し舟が重要な交通手段でした。文政5年には無料の渡し舟が設けられましたが、短期間で廃止されました。明治40年には新しい渡し舟が就航し、大正7～8年頃まで運行していました。

現代の伊孑志

現在、伊孑志地区には鉄道駅はありませんが、阪急バスが運行しており、宝塚市役所前や逆瀬川駅方面へのアクセスが確保されています。主な道路としては、兵庫県道114号西宮宝塚線と兵庫県道337号生瀬門戸荘線が通っています。伊和志津神社、宝塚市消防本部、塩尾寺などの公共施設や宗教施設も存在します。最新の世帯数や人口、小中学校の学区については、宝塚市の公式ウェブサイト等でご確認ください。

伊孑志地区は、古代からの歴史と武庫川との関わり、そして温泉街として発展した近代の歴史を併せ持つ、魅力的な地域です。古くからの伝統と現代の生活が共存する伊孑志地区は、これからも宝塚市の発展に貢献していくことでしょう。

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