伊藤忠商事東京本社ビル

伊藤忠商事東京本社ビル

伊藤忠商事東京本社ビルは、東京都港区北青山に位置する高層オフィスビルで、総合商社である伊藤忠商事の本社として機能しています。1980年に竣工し、その後の都市開発や環境意識の高まりに合わせて、様々な改修や設備更新が行われてきました。

歴史

伊藤忠商事は1858年に大阪で創業し、1960年代半ばから大阪と東京の二本社体制となりました。1970年代には東京本社への機能移管が進み、日本橋にあった東京社屋が手狭になったため、新たな本社ビルの建設が計画されました。建設地として青山地区が選ばれたのは、東京オリンピック関連の都市整備による青山通りの拡幅でオフィス街としての発展が見込まれたこと、地盤が強固で明治神宮外苑など緑地が近く、災害時にも安全を確保しやすいことが理由でした。

設計は日建設計が担当し、既存のハザマビルや中小の商店、民家などを再開発する形で建設が進められました。建設にあたっては、周辺環境への配慮も重視され、風洞実験に基づいた雁行配置のデザインや、日照への配慮が盛り込まれました。また、基礎工事で発生する大量の残土の搬出には細心の注意が払われ、当初計画されていた大型タワークレーンから中型タワークレーン4基に変更することで作業の迅速化と効率化が図られました。さらに、近隣の秩父宮ラグビー場の試合中には工事用ホイッスルの使用を控えるなど、地域への配慮も行われ、1980年11月4日に竣工式を迎えました。

建築

本社ビルとイチョウ並木の間には、「CIプラザ」と呼ばれるサンクンガーデンが設けられ、飲食店などが配置されています。敷地の約1/3を公開空地としたことで、総合設計制度の適用を受け、高さ90mを超える高層ビルの建設が可能となりました。また、中水道設備や災害備蓄倉庫などの公益施設を設けることで、容積率の割増しも受けています。青山通りの渋滞対策として、車寄せは建物1階に取り込まれています。

本ビルの大きな特徴の一つとして、光庭（吹き抜け）が挙げられます。1970年代のオイルショックや連続企業爆破事件を背景に、停電時にも最低限の執務を可能とする必要性が認識され、光庭が設計されました。光庭の最上部には、ステンレスパイプ製のトラスに多数の穴が開けられたアルミ板が60度の傾斜で取り付けられ、太陽光の拡散と熱負荷の軽減を図っています。最下部には16m×10mのガラス製の天窓が設けられ、落下物に備えた構造となっています。光庭は、採光や換気の機能だけでなく、上下のフロアの一体感を創出する役割も果たしています。

外装には、自然石仕上げが採用され、アメリカ・サウスダコタ州産の「マホガニー・レッド」が選定されました。2150m3に及ぶ石材の調達や、採石場所による色ムラ、採石場を襲った寒波など様々な問題が発生しましたが、伊藤忠商事の社員が現場に派遣され、労務管理や品質管理を行うことで問題を解決しました。この石材は、エントランスホールの内装にも使用されています。

開館当初から、コンピュータによる全館管理が行われており、北側の窓には二重サッシが採用されるなど、遮音性や断熱性が図られています。足元の小窓は開閉可能で、空調を使用しない時間帯でも自然換気が可能です。自家発電装置は常用運転されており、夏場の電力負荷軽減に貢献しています。さらに、2009年には屋上とCIプラザに太陽光発電設備が設置され、電力負荷の軽減が図られています。1階ロビーには、ヘンリー・ムーアの彫刻作品「2つにわかれた横たわる像」が飾られています。

本ビルは1982年に日本建設業連合会主催の第23回BCS賞を受賞しています。

将来計画

2022年5月19日、三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事の4者により、「神宮外苑まちづくり」プロジェクトが発足し、2036年までに高さ190ｍの高層ビルへ建て替える計画が発表されています。

このプロジェクトにより、周辺環境の更なる発展と新たな都市機能の導入が期待されています。

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