伊藤祐昌

伊藤次郎左衞門祐昌の生涯と業績

伊藤次郎左衞門祐昌（いとう じろうざえもんすけまさ）は、1848年7月24日に尾張国名古屋の茶屋町で生まれました。彼は、伊藤家の十四代目として、家業の伝統を引き継ぎながら商業の発展に尽力した実業家です。幼名は千次郎であり、後に隠居名として治助を名乗りました。彼の家族は、織田信長の小姓であった伊藤蘭丸の子孫で、呉服業や不動産業でも名を馳せていました。

伊藤次郎左衞門は家業を継ぐ運命にあり、長兄を早くに失ったため、1866年に家督を継ぐこととなります。彼は早くから名古屋市の公職に関与し、名古屋権区長や博覧会御用係、愛知県博物館長、さらには市会議員という地位を歴任しました。これらの経験を通じて、名古屋の商業界における彼の影響力は増していきました。

特に1877年には第十一国立銀行の設立に携わり、1881年には名古屋商法会議所の初代会頭に就任しました。同じ年に設立した私立銀行、伊藤銀行（現在の三菱UFJ銀行）も彼の重要な業績の一つです。その後も伊藤貯蓄銀行（現在のりそな銀行）の取締役を務めるなど、地域経済の活性化に寄与しました。

彼は1908年に愛知県の貴族院多額納税者議員に選出されましたが、同年内に依願退職しました。経歴の中でも、彼の事業に対する情熱は決して薄れることはありませんでした。1875年、伊藤次郎左衞門は大阪に「えびす屋いとう呉服店」を出店し、さらに事業を拡大させました。雅楽にも深い理解を持ち、熱田神宮で開催される雅楽神事にも毎年参加していたことでも知られています。

彼は詩や和歌にも秀でており、文化的な側面でも多才な人物でした。特に晩年に嵯峨に移住した背景には、藤原定家への憧れがあったと言われています。1924年には家督を息子の伊藤祐民に譲り、治助と名乗ることになります。

1930年12月6日、彼は83歳で京都の嵯峨にて亡くなりました。その生涯は、名古屋の商業界においても、銀行業においても多大な影響を与え続けました。彼の子供達もまた、後に松坂屋の社長として商業界に名を残すことになります。

親族について

伊藤次郎左衞門祐昌の家系は、織田信長の小姓であった伊藤祐広にまで遡ります。彼の義兄には岡谷惣助がいて、貴族院の議員として名を馳せました。また、彼の四男、伊藤祐民は松坂屋の初代社長として知られています。

参考文献

• - 手島益雄『名古屋百人物評論』、1915年
• - 人事興信所 編『人事興信録 第4版』、1915年
• - 衆議院、参議院 編『議会制度七十年史 第1』、1960年
• - 『明治の名古屋人』、名古屋市教育委員会、1969年

彼の業績は、名古屋の商業史において重要な位置を占めています。

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