伊藤音次郎

伊藤音次郎について

日本の民間航空の草分けである伊藤音次郎（いとう おとじろう、1891年6月3日 - 1971年12月26日）は、航空界において多くの功績を残した人物です。彼は伊藤飛行機研究所を創設し、多くの飛行士を育成すると同時に、国産機の開発に努めました。

来歴

伊藤音次郎は大阪府大阪市南区（現：浪速区）恵美須町に生まれました。1904年には地元の尋常高等小学校を卒業し、銅・鉄の商売をする佐渡島商店に就職します。しかし、大正を迎える頃には、彼の心の中には飛行機への強い興味が芽生えていました。1910年、彼は19歳で東京に上京し、東京飛行機製作所で奈良原三次のもとで無給の職員としてキャリアをスタートさせました。

伊藤は1915年1月31日、千葉市美浜区に伊藤飛行機研究所を設立し、独立した航空技術者となります。彼は早速、自身のアイデンティティを込めた「伊藤式・恵美1型」を製作し、1916年に東京での訪問飛行を成功させ、名声を博しました。更には、1917年には日本民間初の夜間飛行にも成功し、発展を続けました。その後、施設は台風による被害を受け、1918年には津田沼町に研究所を移転し、社名を伊藤飛行機製作所に変更しました。

伊藤の元で育成された飛行士には、日本の初の女性飛行士・兵頭精や、民間で初めて宙返りを成功させた山縣豊太郎などがいます。また、1924年には本田宗一郎が音次郎のもとで飛行訓練を行うも、家庭の事情でわずか1ヶ月半で断念しました。

民間航空の発展に寄与

1923年、朝日新聞社が東西定期航空会を設立すると、伊藤飛行機研究所は航空機とパイロットを提供し、民間定期航空運輸の発展にも寄与しました。また、1930年には日本軽飛行倶楽部を設立し、軽飛行機の普及に努めましたが、1936年には悲しいことに長男の信太郎を墜落事故で失います。

第二次世界大戦後は、GHQの航空禁止令のために航空界から引退し、1948年には「恵美開拓農業協同組合」を設立。新たな農業活動を通して再出発を図ります。彼の農地は後に新東京国際空港（現：成田国際空港）の建設予定地の一部として選ばれることとなります。

成田空港とその後

成田空港建設計画が突然決まると、現地住民は困惑を知り、三里塚闘争に巻き込まれることとなりますが、伊藤は空港建設を受け入れて地元の反対を乗り越え、全農地の売却に合意しました。これにより、新東京国際空港公団との用地売却契約を結ぶことになりました。後に、民間航空の発祥を記念する碑が千葉市稲毛海浜公園にて建立されるなど、彼の功績は航空業界において大きく評価されています。

1971年12月26日、伊藤は成田空港の完成を目にすることなく他界しました。享年80歳。成田空港の開港は約7年後の1978年に実現します。

日記と記念碑

伊藤が書き残した日記は、航空史における貴重な資料として評価されており、日系航空協会によってアーカイブ化されています。また、彼の生涯を描いた漫画も存在し、その内容は多くの人々に彼の足跡を伝えています。伊藤音次郎の人生は、日本の航空界の発展に寄与した重要なものであり、後世にわたって語り継がれています。

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