伊豆箱根鉄道駒ヶ岳鋼索線

駒ヶ岳鋼索線（駒ヶ岳ケーブルカー）とは

駒ヶ岳鋼索線は、神奈川県箱根町の駒ヶ岳登り口駅から駒ヶ岳頂上駅を結んでいた、伊豆箱根鉄道が運営するケーブルカー路線でした。通称「駒ヶ岳ケーブルカー」として親しまれていましたが、2005年（平成17年）に惜しまれつつも廃止されました。

概要

箱根連山の一つである標高1,327mの駒ヶ岳は、芦の湯温泉や湯の花温泉といった温泉地がある東麓からケーブルカーでアクセスできました。山頂には箱根神社元宮があり、芦ノ湖や富士山の絶景を一望できるスポットとしても人気でした。

ケーブルカーの車両は、開業時に日立製作所で製造されたもので、「湯の花」と「駒ヶ岳」という愛称が付けられていました。車内はロングシートで、吊革も設置されていました。霧が多い地域であるため、強力なヘッドライトが2灯装備されていたのも特徴です。車体塗装は当初は赤とクリーム色でしたが、後にライオンズカラーに変更されました。

駒ヶ岳頂上駅と箱根駒ヶ岳ロープウェーの駒ヶ岳頂上駅は徒歩3～5分程度の距離にあり、芦ノ湖畔の箱根園へはロープウェーでアクセスできました。しかし、ケーブルカーは山麓側のアクセスがあまり良くなかったため、利用者は年々減少傾向にありました。

最盛期であった1963年度（昭和38年度）には年間110万人の乗客を運びましたが、山頂にあったスケート場などの施設が閉鎖されたことなどから、2003年度（平成15年度）には年間乗客数が5万8千人にまで落ち込み、赤字路線となっていました。

2005年（平成17年）2月25日、伊豆箱根鉄道は経営難を理由に国土交通省関東運輸局に鉄道事業廃止届を提出。代替交通機関として箱根駒ヶ岳ロープウェーがあることから、当初の予定を半年繰り上げて同年4月27日に届出を提出し、2005年（平成17年）8月31日をもって運行を終了、翌9月1日に廃止されました。

路線データ（廃止時）

路線距離（営業キロ）：0.7km
軌間：1067mm
駅数：2駅（起終点駅含む）
高低差：282m

運行形態

15分間隔で運行され、所要時間は5分でした。

廃止時の通常運賃は、大人片道370円（往復630円）、子供片道180円（往復310円）でした。ケーブルカーとロープウェーの通し運賃は、大人片道990円、子供片道500円でした。

廃止直前の2005年（平成17年）7月24日から最終営業日の8月31日までの約1ヶ月間は「さよなら運転割引料金」として、運賃が通常の約半額の片道190円・往復320円（子供は片道・往復とも無料）となりました。また、同年8月13日から8月31日の間には、「箱根駒ヶ岳ケーブルカー想い出きっぷ」や「想い出周遊きっぷ」といった企画割引券も販売されました。

歴史

1957年（昭和32年）11月16日：駒ヶ岳鋼索線 駒ヶ岳登り口 - 駒ヶ岳頂上間が開業
2005年（平成17年）9月1日：駒ヶ岳鋼索線 駒ヶ岳登り口 - 駒ヶ岳頂上間（全線）廃止

駅一覧

駒ヶ岳登り口駅
駒ヶ岳頂上駅

駒ヶ岳頂上駅構内にはレストランもありました。

接続路線（廃止時）

駒ヶ岳登り口駅：小田原駅から伊豆箱根鉄道バス駒ヶ岳登り口経由箱根関所跡行き（所要時間50分）
駒ヶ岳頂上駅：箱根園から箱根駒ヶ岳ロープウェーで連絡（駒ヶ岳頂上駅まで徒歩3～5分）

廃線後

廃線後、駒ヶ岳鋼索線の撤去・復旧工事が実施されました。2008年には施設・車両はすべて解体撤去されています。富士箱根伊豆国立公園の指定地域内であるため、自然公園法に基づき、軌道跡の整地や植林など、跡地を山林に復旧する原状回復が行われました。

駒ヶ岳登り口駅で接続していた伊豆箱根バスも、ケーブルカー廃線後は経路から外れました。現在、駒ヶ岳登り口駅へのアクセス道路は通行止めとなっています。

かつて駒ヶ岳の山頂へと人々を運び、箱根の観光を支えた駒ヶ岳鋼索線は、その役目を終えましたが、その歴史は今も語り継がれています。

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