伊豫鉄道甲1形蒸気機関車

伊豫鉄道甲1形蒸気機関車の概要

伊豫鉄道甲1形蒸気機関車は、かつて伊豫鉄道で運行されていたタンク式の蒸気機関車です。この機関車は、日本で初めてクラウス社製として製造され、歴史的な価値を持つ存在となっています。本資料では、伊豫鉄道甲1形の特徴や他の同系列機関車、さらには改造や運用の状況について詳しく解説します。

機関車の製造と歴史

1888年、ドイツのミュンヘンにあるクラウス社の工場で製造され、同年8月に松山に到着したのが1号機です。続いて1891年には3・4号機が追加製造されました。これらの機関車はすべて刺賀商会を通じて発注されたもので、製造銘板には刺賀商会の名前が刻まれていました。

1900年には、道後鉄道と南予鉄道の合併に伴い甲1形という形式名が与えられることになります。また、夏目漱石の小説「坊っちゃん」に登場する列車のモデルとしても知られています。1号機は1967年に鉄道記念物に指定され、以降も文化財としての保護が続けられています。

機構と設計

甲1形は0-4-0(B)型飽和式単式2気筒ウェルタンク機で、運転整備重量は7.8トンです。ウェルタンク方式を採用したことで、低重心化・強度向上が実現され、良好な追従性を持つ小型機関車となりました。動軸の支持には3点支持方式を採用しています。加えて、煙管は45本、使用圧力は12.4 atmであり、ボイラーや弁装置も計画的に設計されています。

特徴的なのは、ディスク式の動輪や開放型の運転台、そしてリス籠形の火の粉止めです。これにより、対比されるイギリス製の小型機関車に比べても頑丈で実用的でした。更に、国鉄標準のねじ式連結器が採用されています。

改造とその後

1900年頃に行われた改造では、運転台に窓付きの妻板を設け、煙突を円筒形に改造しました。1930年代からの改軌作業では、台枠の拡幅と車軸の新製も行われ、水タンク容量が増加しました。新たに蒸気ブレーキも追加され、運用性能が向上しています。

甲1形は1954年の蒸気機関車全廃時まで、伊豫鉄道の主力機関車として活躍しました。廃車後、1号機は道後公園に保存されましたが、劣化が進んだため、1965年に部品の修復が行われました。その後、梅津寺公園で展示され続けています。

他の形式との関係

甲2形・甲3形・甲5形についても詳しく見ていきましょう。甲2形は1898年に同じくクラウス社から製造された機関車で、動輪や煙突の形状に若干の違いがあります。甲3形は道後鉄道から引き継いだもので、製造はクラウス社ですが、書類上はイギリスの製造所名が記載されています。甲5形は、1901〜1908年にかけて増備されたもので、すでに甲1形と同型の特性を持ち、1956年に廃車となりました。

レプリカの存在

現在、伊予鉄道本社前や愛媛県総合科学博物館に、大きなレプリカが展示されています。また、過去には松山市の米山工業による走行可能なレプリカも存在しました。2001年には、甲1形をモデルにしたD1形も製造され、週末には「坊ちゃん列車」として運行されています。

伊豫鉄道甲1形蒸気機関車は、日本の鉄道史において重要な位置を占めており、その特徴的なデザインと技術革新は、後の鉄道技術に多大な影響を与えました。

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