伊賀国分寺跡

伊賀国分寺跡と長楽山廃寺跡

三重県伊賀市に位置する伊賀国分寺跡は、奈良時代に創建された古代寺院の遺構であり、国の史跡として保護されています。この地は、聖武天皇の詔によって全国に建立された国分寺の一つで、伊賀国における僧寺の中心地でした。また、その東方には、国分尼寺の跡と推定される長楽山廃寺跡が位置し、こちらも国の史跡に指定されています。

伊賀国分寺跡

概要

伊賀市街地の南東部、標高約170メートルの台地上に位置する伊賀国分寺跡は、東西約220メートル、南北約240メートルの範囲に土塁で囲まれた寺域を有しています。文献によると、平安時代には国分寺料として5,000束の記録があり、また、仏像や法具の存在も示唆されています。中世以降は寺勢が衰退し、所在が不明となりましたが、地元では「長者屋敷」として語り継がれてきました。近世には、別の寺院が国分寺を称していましたが、現在では楽音寺がその系譜を継いでいます。大正時代に本格的な調査が始まり、寺域の土塁や伽藍の基壇が確認され、国の史跡に指定されました。しかし、第二次世界大戦中に海軍飛行場建設のため一時指定解除され、遺構の一部が損なわれましたが、戦後、改めて史跡に再指定されました。

伽藍配置

伽藍は、中門、金堂、講堂を南北一直線に配置し、中門から延びる回廊が金堂に繋がるという、典型的な国分寺の配置を踏襲しています。礎石は、上野城下の神社建設のために運び出されたとされ残っていませんが、金堂と講堂の土壇に残る抜取跡から、いずれも桁行七間、梁行四間の構造であったと推測されます。塔は当初、回廊外の南西に位置すると考えられていましたが、後の調査で回廊外の東方にも基壇が確認されています。また、金堂と講堂の背後には経蔵や鐘楼と見られる基壇、さらに講堂の背後には僧房や食堂と推測される基壇が存在します。特筆すべきは、伽藍の主軸が南北線から東に4度30分傾いていることで、周辺の関連建物跡も同様の軸線上に配置されていることがわかっています。

出土品

寺域からは、奈良時代から鎌倉時代にかけての瓦や、土器、陶器などが発見されています。特に、瓦の一部は毛原廃寺跡（奈良県山辺郡山添村）と同笵であり、同地の瓦窯で製作された可能性が指摘されています。

長楽山廃寺跡

概要

伊賀国分寺跡の東方約200メートルに位置する長楽山廃寺跡は、国分尼寺の跡と考えられています。この寺院もまた、国の史跡に指定されており、古代における尼寺の様子を今に伝えています。

伽藍配置

推定される寺域の西側に伽藍が偏って配置されており、金堂と講堂の土壇が確認されています。伊賀国分寺とは異なり、伽藍の主軸は南北線から東に11度傾いています。金堂の基壇には礎石の抜取穴が残り、桁行七間、梁行四間の構造であったと推測されますが、講堂の礎石抜取穴や、その他の塔、中門などの遺構は確認されていません。

文化財

伊賀国分寺跡：大正12年3月7日指定、昭和19年9月28日指定解除、昭和23年1月14日再指定、昭和36年2月7日指定範囲変更。
長楽山廃寺跡：大正12年3月7日指定。

現地情報

伊賀国分寺跡所在地：三重県伊賀市西明寺字長者屋敷
長楽山廃寺跡（伊賀国分尼寺跡）所在地：三重県伊賀市西明寺字長楽寺

伊賀国分寺跡と長楽山廃寺跡は、古代における地方寺院の様子を理解する上で重要な遺跡であり、歴史的な価値が高い場所です。

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