伊達宗重

伊達 宗重 (だて むねしげ)

伊達宗重は、江戸時代前期の武士で、涌谷伊達家の当主として知られています。彼は伊達騒動の中心的人物の一人で、「伊達安芸」という名でも知られています。宗重の生涯は、家族の背景、彼の政治的活動、そして彼が直面した困難な状況を通じて形成されました。

生涯

家督相続までの背景

宗重は、元和元年（1615年）11月5日に涌谷伊達家の初代当主である伊達定宗の次男として誕生しました。涌谷伊達家は22,000石を領する武家であったため、彼は良い家庭環境のもとで育ちました。成長すると、宗重は準一家の天童家の当主、天童重頼の娘と結婚し、婿養子としてその家名を受け継ぎました。彼は天童甲斐頼長を名乗りますが、兄・宗実の急逝（寛永16年・1639年）に伴い、元の家へと戻されて世子となりました。このとき、伊達忠宗から偏諱を受けて「伊達信濃宗重」と改名します。

その後、伊達宗重は慶安4年（1651年）に父の隠居により家督を相続し、「伊達安芸宗重」と名乗るようになりました。

伊達騒動の渦中へ

万治3年（1660年）、藩主・伊達綱宗が幕府から隠居を命じられ、未だ幼い亀千代が次期藩主となりました。宗重は、仙台藩の政治的権力が宗勝に集中することに対し強い懸念を抱いていました。宗重は、藩政を独占する宗勝に対し書状を送り、諫言を試みましたが、彼の意見は退けられました。

この時期、仙台藩は地方知行制により、武士たちが大きな権力を持つ独立した存在となっていました。宗勝とその一派が過剰な力をふるうことに不満を持つ宗重は、党派争いの中心的な存在となっていきます。彼は、特に領地に関する争いが勃発すると、その立場が強化され、宗勝と対立するようになります。

寛文5年（1665年）には、伊達宗倫と宗重の間で領地問題が発生し、これが徐々に大きな対立に発展しました。藩内での不満が募る中、亀千代による暗殺未遂事件や宗勝に対する暗殺計画が発覚し、事態はより緊迫したものとなっていきました。これにより宗重の反宗勝派の動きが一層加速し、彼は藩の現状を幕府に訴える決意を固めることになります。

幕府に訴える決意

宗重は、寛文10年（1670年）に自らの申し条を幕府に提出しました。この行動は、藩内の内紛が幕府に知られることを恐れる一部の者たちからは反発を受けました。しかし、宗重は藩の安定を確保し、藩政を正すために動くことに自らを捧げました。

寛文11年の初め、江戸に上り、法廷で議論が行われましたが、その最終的な結末は非常に悲劇的なものでした。彼は3月27日に酒井忠清邸で宗勝側の家老からの襲撃を受け、戦いの中で命を落としました。

伊達騒動の影響と評価

この事件は「伊達騒動」として歴史に名を残すこととなります。宗重や襲撃者の原田が死亡した結果、藩は何らの処罰も受けることなく、62万石の領地を維持することができました。宗重の死後、彼は忠臣として評価され、彼の子供である宗元が家督を継いでいくことになります。特に、宗重の訴えに基づいて行われた領地境界の修正の結果も、彼の努力の一環と言えるでしょう。

結論

伊達宗重は、江戸時代において重要な政治的な役割を果たし、彼の存在は家族や藩の運命に大きな影響を与えました。また、その生涯は後の文学作品や映像化にも影響を及ぼすこととなり、特に山本周五郎の小説『樅ノ木は残った』での描写により、多くの人々に彼の名が知られることになりました。彼の歴史的な評価は、死後も続き、昭和3年には正五位を追贈されています。

もう一度検索