伊馬春部

伊馬 春部（いま はるべ）

伊馬春部は、1908年5月30日に福岡県鞍手郡木屋瀬村（現在の北九州市八幡西区木屋瀬）で生まれました。彼の本名は高崎英雄で、作家、劇作家として広く知られています。戦前から戦後にかけての日本文学に多大な影響を与え、ユーモア小説やラジオドラマを中心に、その才能を発揮しました。

経歴

伊馬は旧制鞍手中学校を卒業後、國學院大學に進み、そこで釈迢空（折口信夫）から歌を学びました。1932年にはムーランルージュに参加し、伊馬鵜平というペンネームの下で新喜劇の脚本を手掛けました。この時期に、井伏鱒二の紹介でデビュー前の太宰治と親友となり、その後の文学活動に影響を与えました。

1934年には文藝同人誌『青い花』を創刊し、太宰や森敦、中原中也らと共に活動しました。1940年にはNHKの実験放送において日本初のテレビドラマ『夕餉前』の脚本を担当し、その名は全国に広まりました。戦後は伊馬春部という名前に改め、1947年にはラジオドラマ『向う三軒両隣』がヒットし、1948年には映画化されました。この作品を契機に、伊馬の名前はさらに広く知れ渡ることになりました。

1956年にはNHK放送文化賞を受賞し、1961年に『国の東』で芸術祭奨励賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝きました。また、1976年には歌会始の召人でもあり、詠んだ和歌が後に歌碑として建立されています。

作風

伊馬鵜平名義での初期の作品では、軽やかな語り口で時事問題を風刺する内容が多く、ラジオドラマでも同様のスタイルが見られました。彼は、メディアの違いを理解し、物語を緻密に構築するようになりました。

戦後は社会の混乱を背景に、明るいテーマを見つけるのが難しくなりましたが、横山隆一の漫画を基にした『ベストの王様』の制作を機に、ユーモアを取り入れた作品を書くようになりました。特にラジオドラマ『向う三軒両隣』では、ホームドラマのスタイルを取り入れ、観る人を楽しませる作品を次々に発表しました。

また、『屏風の女』や『ある自転車泥棒の話』のように、ナンセンスな要素を盛り込んだ作品も多数あり、作品全体に空想的な発想が反映されています。さらに、太宰治や斎藤茂吉を題材にした戯曲も手がけ、彼らの文学に対する敬意を表しています。

評価

伊馬はラジオドラマの新たな地平を開き、数々の受賞歴を持ちます。その人柄は温厚で、純朴であったと同時に、彼の作品には人に対する愛情が込められているとされ、作中には多くの温かいキャラクターが登場します。彼の作品は、旅行趣味や日常生活のエッセンスを色濃く反映したものであり、時を超えて多くの人々に愛されています。

旧高崎家住宅

伊馬の生家である旧高崎家住宅は、江戸時代から続く商家であり、現在は北九州市の重要な文化財として保存されています。彼の遺品や資料も展示されており、訪れる人々にその足跡を伝えています。さらに1984年には彼の死後、歌碑も建立され、彼に対する敬意が表されています。

著書と影響

伊馬春部の著作には、『桐の木横町』、『募金女學校・かげろふは春のけむりです』などがあり、ユーモア小説の分野での多彩な作品が揃っています。また、近年では日本の演劇やテレビ文化においても、その功績が見直されています。彼の作品は、今なお多くの読者に親しまれ、影響を与え続けています。

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