伸子 (小説)

小説『伸子』

『伸子』（のぶこ）は、著者中條百合子（宮本百合子）の作品で、1924年から1926年にかけて雑誌『改造』に連載された後、1927年に単行本として改造社から発行されました。この小説は、主人公・佐々伸子の人生を通じて、当時の女性たちの苦悩や成長を描き出しています。

あらすじ

物語は1918年、若手小説家の佐々伸子が父親と共にアメリカへ渡り、留学生活を始めるところからスタートします。父親が流行性感冒、通称スペインかぜに感染し、伸子は看病をすることで彼女の人生にさらなる変化が訪れます。その中で古代東洋語学者の佃一郎と出会い、二人は恋愛関係に発展し、ニューヨークで結婚します。

しかし、伸子が母親の出産に伴い日本に帰国すると、彼女の新しい家庭生活は思うようには進みません。母との複雑な関係や、夫との意見の食い違いが生じ、伸子は自らの小説家としての成長にも苦しみます。その中で、次第に彼女と佃の間には亀裂が生じ、最終的に二人は離婚という選択をするに至るのです。

評価

この作品は、山田洋次が評価したように「夫婦の離婚を正面から描いた日本初の小説」であり、強い迫力を持っています。また、作家の稲沢潤子は、この作品が戦後の民主化の流れの中で、多くの同世代の女性たちに共感を得たことを指摘しています。百合子の代表作であり、早い時期に近代的自我を確立しようとする女性たちの姿を映し出した作品として評価されています。

その後の展開

戦後、著者はこの『佐々伸子』を主人公にした続編を構想し、『二つの庭』や『道標』などの作品が続けて書かれました。しかし、「道標」では、主人公がソビエト連邦からの帰国を決意するシーンで物語が終わってしまい、その後の展開は描かれずに作者が急逝することになります。百合子は、1930年代から日本の敗戦までを描く予定だったと言われていますが、作品は未完に終わりました。

外部リンク

• - 『伸子』：新字新仮名 - 青空文庫

このように『伸子』は、著者自身の体験を基に描かれた深い人間ドラマが展開されており、当時の社会問題や女性の在り方を激しく問いかける貴重な作品です。

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