佐久往還

佐久往還の概要

佐久往還（さくおうかん）は、山梨県韮崎市から長野県佐久市までを結ぶ脇往還であり、佐久甲州街道とも呼ばれています。概ね現代の国道141号に沿っているこの道は、近世以降に整備が進み、物流や交通の要所として賑わいました。韮崎と岩村田の間には、9か所の馬継場が設けられ、旅人や物資の往来が盛んでした。

沿革

この往還は、かつては平沢口と称され、甲斐国の重要な道としての歴史を有しています。『甲斐国志』にはこの道が古道として認識されていないことから、近世に整備された道であると推測されます。武田氏がこの道を軍事用に使用し、以降は甲州と佐久郡を結ぶ街道として定着しました。

江戸時代に五街道が設けられると、甲州街道と中山道を繋ぐ脇往還としての役割を果たすようになります。「佐久往還」という名称が使われるようになったのは、甲州街道が諏訪まで延伸した慶長年間以降と考えられています。特に、天保年間には釜無川の舟山河岸が整備され、富士川舟運と結びつくことで韮崎宿が豊かに発展しました。

明治時代に入ると、佐久甲州街道が県道として編入され、馬車が通行できるように改修されるなど、道の整備が進みました。一方、佐久往還も改修が行われ、大正時代には鉄道敷設が進み、物流の中心が馬や荷車から鉄道へと移行しました。このように、佐久往還は一時的に衰退しましたが、その後国道141号が改良工事を重ね、再び物資輸送の主な経路として利用されるようになりました。

道筋

佐久往還の起点は、韮崎宿の本町通りにある通称「韮崎追分」です。ここから東へ進むと、岩村田宿までの約18里の道のりで、甲州側に3か所、佐久側に6か所の馬継場が設けられています。

道は塩川に沿い、七里岩を北上し、八ヶ岳の南側を目指します。長沢には通行を監視する口留番所が設置されていました。さらに弘法坂を上り、念場原を越えて平沢に進みます。千曲川の左岸に沿った道は、水害のリスクがあるものの、美しい景観を楽しむことができます。特に1772年の水害は、道の維持管理に大きな影響を与えました。

脇道

佐久往還には「佐久道」と呼ばれる重要な脇道も存在し、若神子で分岐して津金を経由し浅川へ至ります。このほかにも、岩村田宿から南へ進み野沢へ至る道筋も利用され、佐久甲州道と連結されるルートとして知られていました。

通行状況

佐久往還では馬継場を利用した荷物の積み替えが制度化されており、日用品や衣類、特に米の輸送が盛んに行われていました。山梨県内では米どころとして有名なこの地域は、物流の重要なハブとして機能していました。また、参勤交代のための主要な道路ではなく、信仰の道としても利用されており、特に伊勢参りに多くの人が訪れました。

史跡・文化財

佐久往還の多くは現代の道路として利用されていますが、古い道跡や史跡も残されています。武田氏に由来する古戦場や城跡も多く、観光名所としても知られています。長泉寺の板碑や長沢口留番所跡は、県指定の文化財に指定されており、その歴史的価値は高く評価されています。自然景観との融合も魅力の一つで、観光に訪れる人々にとっても人気のスポットとなっています。

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