佐久間信栄

佐久間信栄：織田家重臣から茶人、そして旗本へ

佐久間信栄は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけて活躍した武将です。織田信長の重臣として知られる佐久間信盛の長男として生まれ、幼少期から父に従い、数々の戦場を経験しました。諱は正勝とも伝えられていますが、史料からは信栄が確実視されています。剃髪後は不干斎と号しました。

織田家での活躍と失脚

信栄は、父と共に伊勢国大河内城攻略戦や対六角氏戦、野田城・福島城の戦いなどで武功を挙げました。天正4年（1576年）の石山合戦では天王寺城の守備を任されるなど、重要な役割を担っていました。その後、父が石山本願寺攻めの指揮官になると、その補佐役として畿内各地に出兵。しかし、石山合戦は長期化し、成果が出ませんでした。

織田信長は天正8年（1580年）、朝廷を動かし本願寺と和睦を結びますが、信栄と信盛は19か条にも及ぶ譴責状を突きつけられ、高野山に蟄居することとなります。譴責状には信栄の罪状が詳細に記され、その非道の度合いがうかがえます。高野山での生活は茶の湯に深く耽溺する日々だったと伝えられています。その後、高野山を追われ、熊野に落ちのびたとされる説もあります。

信長死後、新たな主君へ

父の死後、天正10年（1582年）1月に信栄は赦免され、織田信長の嫡男・信忠に仕えました。本能寺の変後は、信忠の弟・信雄に仕え、小牧・長久手の戦いでは大野城の築城に携わり、滝川一益と対峙しました。しかし、蟹江城の守備を任されていた際に、留守中に一益に城を落とされるという失態を犯し、これが事実上の最後の武功となりました。その後は、76歳で死去するまで合戦に参加した記録はありません。

信雄が改易されると、信栄は茶人として豊臣秀吉に仕え、朝鮮出兵では鉄砲の製造を担当しました。大坂の陣後は徳川秀忠に仕え、武蔵国児玉郡、横見郡に3000石を与えられ、御咄衆を務めました。

晩年と子孫

寛永8年（1632年）、江戸で死去しました。2男7女をもうけましたが、2人の息子は信栄に先立って亡くなっていました。そのため、弟の信実、佐久間安政の次男・信勝、そして従弟の信重を養子に迎えました。信実と信勝は子を残さず家系は断絶しましたが、信重の子孫と信実の遺児・盛郎の子孫は旗本として存続しました。現在も残る不干斎の書状は、その生涯を知る貴重な史料となっています。

まとめ

佐久間信栄は、武将として、そして茶人として、激動の時代を生き抜いた人物でした。織田家重臣としての輝かしい経歴、そして失脚、豊臣秀吉、徳川秀忠への仕官、そして晩年の茶人としての生活は、時代の変化の中で柔軟に生き抜いた証と言えるでしょう。彼の生涯は、戦国時代から江戸時代への移行期を生き抜いた一人の武将のドラマであり、歴史に刻まれた足跡です。彼の存在は、単なる武将像を超え、時代の転換期を生き抜いた複雑な人物像を私たちに示唆しています。

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