石山合戦

石山合戦：信長と本願寺の10年戦争

石山合戦は、元亀元年9月12日（1570年10月11日）から天正8年8月2日（1580年9月10日）まで続いた、織田信長と石山本願寺（当時、大坂本願寺と呼ばれていたとする説もある）を中心とした本願寺勢力との長期にわたる合戦です。本願寺11世法主・顕如が石山本願寺に籠城し、信長の天下統一を阻む一大勢力として抗戦しました。

戦いの発端：山科本願寺の焼討ちと石山本願寺

本願寺は当初、京都山科を拠点としていましたが、天文元年（1532年）に細川晴元らによって山科本願寺が焼き討ちされると、新たな拠点として大坂御坊（後の石山本願寺）を選びました。交通の便が良く、防御にも適した立地でした。その後、本願寺は石山本願寺を拠点に勢力を拡大し、一向一揆を背景に畿内における強力な勢力へと成長しました。

信長の上洛と初期の対立：信長は永禄11年（1568年）に上洛し、畿内を掌握すると、本願寺にも矢銭を要求しました。顕如はこれを支払いましたが、信長と室町幕府13代将軍・足利義昭の関係が悪化すると、状況は変化します。本願寺の勢力圏にいた近衛前久の働きかけもあり、本願寺は三好氏を支援するなど、信長と対立する動きを見せ始めました。

合戦の展開：淀川堤の戦いから長島・越前一揆の鎮圧まで

元亀元年9月12日、顕如は信長が本願寺を攻撃する意図があると判断し、先制攻撃を開始しました（淀川堤の戦い）。この戦闘は織田軍の優勢で終わりますが、石山本願寺は容易には陥落せず、長期戦へと突入します。

その後、長島一向一揆や越前一向一揆といった、本願寺と連携する一揆が各地で発生します。信長はこれらの勢力を次々に鎮圧していきますが、長島攻めでは多大な犠牲を払うなど、本願寺勢力との戦いは容易ではありませんでした。この間、信長と本願寺の間には、武力衝突のない時期もありましたが、情報戦や外交工作は盛んに行われていました。

天正2年（1574年）には越前一向一揆が勃発し、信長は越前を奪還しようとしますが、本願寺は越前守護に下間頼照を任じるなど対応し、両者の和議は決裂します。

信長は長島、越前の一揆を次々と鎮圧。特に長島では徹底的な殲滅作戦を行い、本願寺に大きな打撃を与えました。これにより本願寺は信長と再度講和せざるを得ない状況に追い込まれます。

天王寺合戦と木津川口海戦：海上からの補給路をめぐる攻防

天正4年（1576年）には、顕如は毛利輝元や足利義昭と連携して再び挙兵します。信長は石山本願寺を包囲しますが、本願寺は海上からの補給路を利用して抵抗を続けます。天王寺合戦では織田軍が一時的に敗北するものの、信長の反撃により本願寺軍は撤退します。

その後、木津川口海戦で毛利水軍が本願寺に兵糧を補給します。信長は九鬼嘉隆ら水軍を率いてこれに対抗し、第二次木津川口海戦では毛利水軍を撃退します。

講和と石山本願寺の終焉

天正6年（1578年）には荒木村重の反乱が発生しますが、これは石山本願寺への影響は限定的でした。織田軍の優勢を受け、天正8年（1580年）閏3月7日、本願寺は信長と講和。顕如は石山本願寺を退去し、石山本願寺は織田軍の手に落ちました。退去後、石山本願寺は焼失します。焼失の理由は諸説ありますが、教如の抵抗勢力によるものとする説もあります。

戦後の影響：本願寺の分裂と各地一向一揆の終焉

石山合戦の終結により、各地の一向一揆は勢力を失い、本願寺は顕如と教如の二派に分裂します。この分裂は、江戸時代まで続く本願寺派の東西両派に分かれる端緒となりました。また、講和条件であった加賀国の一部返還は、教如の抵抗により実現しませんでした。

石山合戦は、戦国時代の宗教勢力と権力者との対立、長期戦の様相、そして戦後の影響まで、様々な要素を含む重要な合戦でした。この合戦は、信長の天下統一への道のりを示すとともに、戦国時代の終焉を告げる大きな出来事の一つと言えます。

もう一度検索