佐呂間町ふれあいバス

佐呂間町ふれあいバス：過疎化とモータリゼーション化がもたらした公共交通の変遷

北海道佐呂間町は、オホーツク地方に位置する町です。この地域では、戦前からバスが重要な交通手段でしたが、過疎化やモータリゼーション化の波を受け、路線の変遷を繰り返してきました。本稿では、佐呂間町の公共交通、特に「佐呂間町ふれあいバス」の歴史と現状について、詳細に解説します。

戦前からのバス路線

戦前、佐呂間町とその周辺地域では、複数のバス会社が佐呂間と遠軽・安国、佐呂間と常呂などを結ぶ路線を運行していました。太平洋戦争中は、これらの会社が統合され、北見乗合自動車株式会社（現在の北海道北見バス）が佐呂間営業所を開設しました。しかし、戦時中の物資不足などにより、路線の維持は困難を極めました。

戦後の路線網拡大と縮小

戦後、統制が解除されると、路線の拡大が進みました。北見バスは、佐呂間－遠軽線、佐呂間－常呂線に加え、新たな路線を開設しました。湧別町も若佐地域への路線を運行開始するなど、地域住民の足としてのバス路線は充実しました。しかし、1960年代に入ると、過疎化やモータリゼーション化が加速し、バス路線の利用者は減少しました。北見バスは、採算性の悪化を理由に、多くの路線を廃止しました。佐呂間町においても、観光路線や、鉄道との競合による路線廃止が相次ぎました。

町営バスの設立

佐呂間町では、中学校の統合に伴い、生徒の通学手段確保が課題となりました。国鉄湧網線を利用していた生徒は、列車時刻の差により、始業時刻の調整が必要となっていました。国鉄への陳情や北見バスへの路線延長の要請も実らなかったことから、町は自らスクールバスの運行に乗り出すことを決断、1970年9月に一般乗合旅客自動車運送事業の認可を受け、佐呂間町営バスが誕生しました。当初は赤字経営でしたが、北見バスから路線を譲受けるなどし、運行を継続しました。

国鉄湧網線廃止と町営バスの転換

1987年には、国鉄湧網線が廃止され、網走バスによるバス代行が開始されました。佐呂間町では、町営バス路線と重複する部分も多かったことから、赤字拡大を背景に、一般乗合旅客自動車運送事業から80条バスへの転換を行いました。これは、自治体がバス運行を直接担う形態への移行を意味します。

佐呂間町ふれあいバスの誕生

2000年代に入ると、佐呂間町では小学校の統合が進み、新たなスクールバスの運行が必要となりました。町営バスと民間バス路線の重複による非効率性を解消するため、「佐呂間町ふれあいバス」計画が策定され、2010年10月に、町内6路線と町外路線を含む新たなバスシステムがスタートしました。民間事業者への補助金は廃止され、北見バスと網走バスは既存路線を廃止しました。ふれあいバスは、町内路線を無料で提供する一方、土日祝日は運休となるなどの制約があります。このため、町では高速バス「イーグルライナー」の停留所を町内に設置するなど、利便性向上への取り組みも進めています。

路線概要

町内路線: 学校の登下校時間に合わせて運行される6路線。日曜・年末年始は全便運休。フリー乗降制を採用。
町外路線: 遠軽線、北見線、網走線。運賃は1乗車500円。土日祝日・年末年始は運休。

まとめ

佐呂間町ふれあいバスは、過疎化やモータリゼーション化といった社会情勢の変化の中で、地域住民の交通ニーズに対応すべく、その形態を変えながら進化を遂げてきた公共交通機関です。無料運行や町外路線の運行など、利便性の向上に努める一方で、運休日や運行時間帯の制約も存在します。今後も、地域住民のニーズと財政状況を考慮しながら、持続可能な公共交通システムの構築が求められるでしょう。

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