佐屋川

佐屋川（さやがわ）とは

佐屋川は、かつて木曽川から分岐していた派川であり、現在の愛知県稲沢市付近から南へ流れ、弥富市付近で再び木曽川に合流していました。全長約17キロメートルに及ぶこの川は、かつて地域の重要な交通路であり、人々の生活に深く関わっていました。

地理

佐屋川は、現在の馬飼大橋のやや上流、愛知県稲沢市祖父江町本甲捨町野付近を分派口としていました。そこから海東郡と海西郡の境界を南に流れ、尾張大橋の上流、現在の弥富市五明の上流で木曽川に再び合流していました。佐屋川の支流には、後に天王川公園となる天王川がありました。

歴史

佐屋川の歴史は、1586年（天正14年）の大洪水によって木曽川の流路が西に移動したことに始まります。この時、残された澪筋が開削整備され、佐屋川となりました。しかし、木曽川からの土砂流入によって水深が徐々に浅くなり、舟運が困難になりました。そのため、1634年（寛永11年）に公認された佐屋街道では、津島から佐屋宿を経由して桑名宿へ向かう「三里の渡し」が重要な交通路となりました。佐屋宿は、参勤交代の大名が通るなど交通の要所として栄えましたが、川の浅水化はさらに進みました。

1645年（天保2年）には、放水路としての開削や幕府からの貸し下げ金による川浚い（浚渫）も行われましたが、近世後期になると佐屋宿からの往来も困難になっていました。川が浅くなるにつれて、水害の頻度も規模も大きくなっていきました。

木曽三川分流工事では、佐屋川を廃川とすることが決定されました。しかし、分派口の締め切りを目前にした1897年（明治30年）9月、木曽川の洪水によって佐屋川にも大量の水が流れ込みました。その結果、9月30日には八開村鵜多須地先（現在の愛西市）で左岸堤防が決壊する「鵜多須切れ」が発生し、八開村だけでなく十四山村（現在の弥富市）まで約7,500戸が被害を受けました。

分派口は1899年（明治32年）に締め切られ、佐屋川は廃川となりました。河道の跡地は耕地として利用され、ほぼ同じ場所に灌漑用水路として佐屋川用水が引かれました。佐屋川用水は、後に木曽川用水の海部幹線水路として統合されました。現在、分派口跡は愛知県営の都市公園・木曽川祖父江緑地として利用されています。また、元流域である稲沢市などの地域では、現在でも地名として「佐屋川」が残されています。

佐屋川は、その短い歴史の中で、人々の生活や交通に大きな影響を与えましたが、その役割を終え、現在はその名残をとどめるのみとなっています。

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