佐敷城 (肥後国)

佐敷城について

佐敷城は、熊本県葦北郡芦北町に所在する日本の城です。この城は、その歴史の中で、複数の勢力による争奪戦の舞台となり、戦略的な要衝として重要な役割を果たしました。特に、加藤清正によって築かれた近世の佐敷城は、佐敷花岡城とも呼ばれ、その城下は薩摩街道と人吉街道が交わる交通の要所でした。

歴史

佐敷城の名前は、南北朝時代から歴史書に登場しますが、中世の佐敷城は現在の城址の東にある「東の城」にあったと考えられています。中世の佐敷城は、八代の名和氏と球磨の相良氏の間で争奪が繰り返されましたが、1459年に相良氏の葦北領有が公認されました。1581年には、島津義久が相良義陽を降伏させ、葦北郡を割譲させました。その後、島津氏は肥後への進出を試みましたが、豊臣秀吉の九州征伐により撤退を余儀なくされました。豊臣政権下で肥後の領主となった佐々成政の統治は短期間で終わり、1588年には葦北郡は加藤清正の所領となりました。

加藤清正は、花岡山に石垣を巡らせた近世の佐敷城を築き、家臣の加藤重次を城代として配置しました。1592年には、梅北国兼が佐敷城を占拠しましたが、留守役の活躍により鎮圧されました。朝鮮の役から帰国した加藤氏は、島津氏への備えとして佐敷城の増改築を行いましたが、1600年の関ヶ原の戦いでは、西軍方の小西氏と島津氏に挟まれた葦北郡は孤立し、佐敷城は島津忠長の軍によって包囲されました。加藤重次は、西軍敗北の報が伝わるまで約1ヶ月間、佐敷城を守り抜きました。その後も増改築が続けられましたが、1615年の一国一城令により廃城となり、天守は熊本城内へ移設されたと伝えられています。

現状

1979年に石垣の一部が発見され、1993年から2001年にかけて発掘調査が行われました。当初は、三層の天守閣を再現する計画も持ち上がりましたが、発掘の結果、天守の礎石が発見されなかったため、学術的な復元を優先する意見が強まりました。その結果、1997年からは石垣の復元を中心とした歴史公園の整備が行われることとなりました。1998年には熊本県指定の史跡となり、城跡から出土した「天下泰平国土安穏」と彫られた瓦も県指定の重要文化財に指定されました。同年4月には、佐敷城跡城山公園として一般公開され、2008年には城跡が国の史跡に指定されました。

構造

城域は、ガイダンス施設に隣接する駐車場の北側に位置しています。浅い空堀を挟んで通路を上がると三の丸に至り、そこから本丸へと進むことができます。三の丸は南へ大きく張り出していますが、遺構はほとんど確認できません。二の丸には高さのある石垣が残り、北出丸を見下ろすことができます。また、西帯曲輪を経て二の丸へ至る虎口は、佐敷城で最大の通路です。本丸は五角形に近い形状をしており、礎石が発見されていないことから、廃城後に削平された可能性が高いと考えられています。

脚注

参考文献
矢野彩仙『肥後佐敷城史』、葦北史談会、1935年（昭和10年）初版。（青潮社により復刊、1982年）
芦北町文化財調査報告第2集「佐敷城跡」（芦北町教育委員会、2004年）

外部リンク
芦北町ホームページ
文化遺産オンライン

佐敷城は、その歴史と構造を通じて、日本の城郭史において重要な役割を果たした場所と言えるでしょう。

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