佐藤友熊

佐藤友熊：激動の時代を駆け抜けた官僚の生涯

佐藤友熊（さとう ともくま）は、1866年1月10日に薩摩国（現在の鹿児島県）で生まれ、1923年9月1日に、関東大震災によって命を落とした、明治から大正にかけての官僚です。検察官、警察官僚として活躍し、関東都督府警視総長、札幌区長といった要職を歴任しました。また、文豪・夏目漱石の友人としても知られています。

生い立ちと青年時代

佐藤友熊は、薩摩国給黎郡喜入郷前之浜村（現在の鹿児島県鹿児島市喜入前之浜町）で、神官の父・佐藤彦松と母・比佐の長男として生を受けました。1883年頃に上京し、東京大学予備門受験を目指して成立学舎で英語を学びます。この頃、夏目漱石と出会い親交を深めました。学費を稼ぐために牛乳配達や新聞配達をしながら勉学に励んだと伝えられています。1884年9月には東京大学予備門予科に入学し、成立学舎出身者を中心に夏目漱石、中川小十郎、太田達人、中村是公、橋本左五郎らと「十人会」を組織しました。1890年に第一高等中学校英法科を卒業後、1894年7月には帝国大学法科大学法律学科（英法）を卒業しました。

法曹界での活躍

大学卒業後の1894年7月31日、佐藤友熊は司法省に入省し、司法官試補として姫路区裁判所に配属されます。その後、龍野区裁判所詰、判事、予備判事・高松区裁判所事務取扱、高松区裁判所検事、津山区裁判所検事、大阪地方裁判所検事などを歴任しました。1900年1月には台湾総督府に転じ、台南県警部長に就任。その後、桃仔園庁長兼台湾土地調査局事務官、宜蘭庁長、兼臨時台湾土地調査局事務官、台北庁長などを務めました。台湾での行政手腕を発揮し、その能力を高く評価されました。

関東都督府警視総長

1907年9月、佐藤友熊は関東都督府に転じ、同事務官に就任。その後、民政部庶務課長を経て、1908年1月11日には同警視総長に就任しました。1917年7月31日の廃官まで、約10年間その職を務めました。警察官僚として辣腕を振るい、関東州の治安維持に大きく貢献しました。

札幌区長時代

1919年12月、佐藤友熊は第5代札幌区長に就任します。発展を続ける札幌区の都市機能を支えるため、電気事業や上水道の拡張に尽力しますが、残念ながら実現には至りませんでした。しかし、区営住宅の建設や札幌体育会経営体育館の区営移管など、区民の生活向上に貢献する施策を数多く実施しました。1921年12月に区長を退任しています。

晩年と突然の死

札幌区長退任後、佐藤友熊は千葉県安房郡北条町北条（現在の館山市）に移り住みました。しかし、1923年9月1日に発生した関東大震災によって自宅が倒壊。柱の下敷きとなり、その生涯を閉じました。

栄典

佐藤友熊は、その功績が認められ、1909年（明治42年）4月20日に正五位、1914年（大正3年）6月10日に従四位を叙位されています。

まとめ

佐藤友熊は、激動の明治・大正時代を、検察官、警察官僚、そして札幌区長として駆け抜けた人物です。その活躍は多岐にわたり、各分野で大きな功績を残しました。また、夏目漱石との親交は、彼の人間性を物語るエピソードとして知られています。関東大震災という悲劇的な形で生涯を終えましたが、その功績は後世に語り継がれるべきでしょう。

参考文献

原武哲、石田忠彦、海老井英次編『夏目漱石周辺人物事典』笠間書院、2014年。
札幌市教育委員会文化資料室編『札幌人名事典』〈さっぽろ文庫66〉北海道新聞社、1993年。
* 内閣「佐藤友熊北海道札幌区長就任ノ件」大正8年。国立公文書館 請求番号：本館-2A-019-00・任Ｂ00907100

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