成立学舎

成立学舎：明治期の進学予備校

明治時代初期から中期にかけて、東京に存在した私立の進学予備校「成立学舎」は、今日の予備校の原型と言える教育機関でした。主に英語教育に重点を置き、第一高等中学校（一高）などの旧制高等学校進学を目指す中等教育機関として、多くの生徒を輩出しました。

歴史と沿革

成立学舎の創立年は定かではありませんが、1876年（明治9年）10月31日付けの読売新聞に、神田今川小路での設立に伴う教員募集広告が掲載されていることから、この頃には既に開校していたと考えられます。1883年（明治16年）刊の『東京諸学校学則一覧』には、大学予備門受験と英学を目的とした学校として、神田[[駿河台]]鈴木町に所在する成立学舎が記載されています。

当初は黒岩周六ら関係者が運営する私塾のような形態だったと推測され、1883年に中原貞七が三崎亀之助から学校を譲り受け、舎長に就任しました。1885年（明治18年）には、速成教育を目的とした分校を四谷区四谷左内町（現新宿区左内町）に開設。その後、四谷分校は四谷東信濃町に移転し、2年制の幼年科と4年制の青年科を設置するなど規模を拡大しました。さらに、女子教育にも力を入れ、1887年（明治20年）には神田[[駿河台]]に女子部を設立しています。

男子部は1893年（明治26年）2月24日付けの読売新聞に閉校広告が掲載され、閉鎖されました。一方、女子部は成立女学校と改称し、1895年（明治28年）まで存続しました。

教育内容と施設

神田[[駿河台]]の校舎を拠点としていた成立学舎は、主に第一高等中学校進学を目指した教育を行っていました。普通科には予科（1年）、本科（3年）、海軍兵学校受験科の3科が設置され、英語、数学、物理、化学、動植物学などの科目が開講されていました。生徒数は800名を超え、中原貞七舎長をはじめ、30名以上の教員が在籍していました。教員の中には、外国人講師も含まれていました。四谷分校では、農林学校受験のための科目が特に重視されていました。

夏目漱石は、成立学舎で一時的に英語を学んだ経験があり、当時の様子について「大学生のアルバイト教師が多く、設備は質素だった」と評しています。

関係者

成立学舎には、多くの著名な人物が関係していました。

生徒:

夏目漱石
新渡戸稲造
黒岩涙香
日高真実
太田達人
橋本左五郎
中川小十郎
佐藤友熊
町田忠治
一木喜徳郎
植村俊平
嘉悦孝
元田テイ
井上準之助
戸川秋骨
野口遵
渋沢元治
芳沢謙吉
荒田武卿
岡喜七郎

教員:

隈本有尚
有賀長雄
三崎亀之助
山田喜之助
坪内雄蔵
土子金四郎
棚橋絢子
鈴木弘恭
跡見玉枝
井上円了
今井哲太郎
赤堀峯吉

舎長：中原貞七

中原貞七は盛岡藩士の子として生まれ、兄が設立した盛岡洋学校で学びました。その後、宮城外国語学校、仙台中学校、東京帝国大学予備門を経て、東京帝国大学文学部政治理財科を卒業。1883年に成立学舎の舎長に就任しました。その後、山形県尋常中学、島根県第二尋常中学、大阪府立岸和田中学、大阪府立八尾中学の校長を務めるなど、教育界で活躍しました。

成立学舎の意義

成立学舎は、明治時代の進学予備校の中でも特に英語教育に力を入れていた学校として知られています。多くの著名な卒業生を輩出し、日本の近代化に貢献した教育機関として、その歴史的意義は非常に大きいです。当時の教育状況や社会情勢を理解する上で、重要な位置を占める存在と言えるでしょう。また、質素な設備の中で、熱心に学んだ生徒たちの姿は、現代の教育にも示唆を与えてくれます。

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