佐藤昭子

佐藤昭子：田中角栄を支えた「越山会の女王」

佐藤昭子（1928年8月5日 - 2010年3月11日）は、日本の政治家秘書、政治運動家として知られています。彼女は33年間にわたり田中角栄の秘書を務め、その愛人であったとも言われ、「越山会の女王」と称されました。本稿では、彼女の生涯と田中角栄との関係、政治的な影響力について解説します。

生い立ちと初期の活動

佐藤昭子は新潟県刈羽郡枇杷島村（現在の柏崎市）に生まれました。雑貨店を営む両親のもと、6人兄弟の末っ子として育ちましたが、幼少期に家族を相次いで亡くすという苦労を経験しました。小学校ではそろばん塾に通い、数学や習字、体育を得意としていました。柏崎高等女学校では級長を務め、陸上部の選手としても活躍しました。当初は数学教師を目指していましたが、東京女子専門学校への進学後、戦災により学校が焼失し、中退を余儀なくされました。

田中角栄との出会いと秘書としての活動

1946年、佐藤昭子は衆議院議員選挙に立候補した田中角栄と出会い、選挙活動を支援します。その後、結婚と離婚、出産と離別を経て、1952年に田中の秘書となりました。田中の個人事務所であるイトーピア平河町ビルを拠点に、田中の政治団体「越山会」の統括責任者など、重要な役職を歴任しました。この間、二度目の結婚と離婚を経験し、1957年には田中の娘と見られる敦子を出産しました。敦子の出生の経緯は複雑で、彼女自身も後に苦悩し、自殺未遂を繰り返したとされています。

「越山会の女王」としての名声と転落

田中内閣末期の1974年、雑誌『文藝春秋』に掲載されたルポ「淋しき越山会の女王」によって、佐藤昭子の名は広く知られるようになりました。国会への参考人招致が決まりますが、「記憶力がいいから全部しゃべっちゃうわ」と反論し、招致は撤回されました。その後、田中内閣は総辞職に追い込まれ、1976年のロッキード事件で田中が逮捕された際には、佐藤自身も東京地検特捜部の事情聴取を受けました。

1985年、田中角栄が脳梗塞で倒れ政治生命を失うと、佐藤は田中眞紀子によって田中事務所を解雇されます。解雇後は自ら政治団体「政経調査会」を主宰し活動しましたが、かつての影響力は失われていきました。1993年には福原学園傘下の財団法人自由ケ丘教育振興財団の理事を務めました。田中角栄とは二度と会うことは叶わず、1993年に彼が死去した際も、葬儀に参列することはできませんでした。しかし、翌年には田中角栄との人生を綴った著書を出版し、旧田中派議員や関係者への政治資金提供などを通じて、政界に一定の影響力を保持しました。

その他のエピソード

佐藤昭子は、かつて田中派の中堅・若手議員であった橋本龍太郎、小渕恵三、羽田孜、小沢一郎らにとって「姉貴分」であり、所属党派が分かれた後も「ママ」と呼ばれ慕われていました。一時は巨額の資産を所有していましたが、預けていた高橋治則が二信組事件で逮捕されたことで、大半を失いました。

2010年3月11日、肺癌のため東京都港区の病院で死去。81歳でした。葬儀は家族葬で行われ、政界からは引退していた上草義輝のみが参列しました。小沢一郎は病院で遺体と対面し、「ママ、お世話になったね」と小さく呟き、涙を流したと伝えられています。

死後、佐藤昭子の寝室の金庫からは、田中角栄が彼女や敦子に宛てて書いた手紙が発見されました。これらの手紙は「田中角栄の恋文」として公開され、話題を呼びました。佐藤昭子は田中の有能な秘書でしたが、田中の政治資金の全てを管理していたわけではなく、複数の金庫が存在していたことがわかっています。

部下であった朝賀昭は、彼女のことを「胸も豊かでスタイルも良く」「まぶしく映った」と回想しています。佐藤自身も晩年の著書で、自身のスタイルに誇りを持っていました。身長157センチメートル、バスト97センチメートルという抜群のプロポーションを持ち、男性を魅了する存在でした。ゴルフやダンス、麻雀を嗜み、小林旭の大ファンでもありました。

著書

『私の田中角栄日記』新潮社、1994年
『決定版 私の田中角栄日記』新潮文庫、2001年
* 『田中角榮―私が最後に、伝えたいこと』経済界、2005年

佐藤昭子の生涯は、田中角栄という巨大な政治家を支え、自身も「越山会の女王」として一時代を築いた女性の物語です。その華やかな活躍の裏には、家族との別れや愛憎、そして晩年の苦難がありました。彼女の人生は、日本の政治史における重要な一幕として、記憶されるべきでしょう。

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