佐藤進 (法学者)

佐藤 進

佐藤進（さとう すすむ）は、日本の法学者として、社会保障法、労働法、そして高齢化社会における総合政策の研究と教育に多大な貢献をしました。1925年6月6日に新潟県で生を受け、2009年4月9日に83歳で逝去しました。生涯を通じて大学教育に携わり、金沢大学、日本女子大学、立正大学、新潟青陵大学といった複数の大学で教授を務め、それぞれの大学から名誉教授の称号を贈られています。

略歴

佐藤進の学究生活は、東京帝国大学法学部を卒業し、同大学院に進学したことから始まりました。1957年には金沢大学法文学部の助教授として大学教員のキャリアをスタートさせました。研究成果は高く評価され、1962年には東京大学から法学博士の学位を取得。1967年には金沢大学の教授に昇任しました。

その後、教育・研究の場を移し、1971年からは日本女子大学文学部社会福祉学科の教授として、社会福祉分野の法制度研究に注力しました。1992年には立正大学法学部教授、1996年には新潟青陵女子短期大学教授を務め、教育対象を広げました。さらに、2000年には新潟青陵大学看護福祉心理学部の教授に就任し、同大学の学長も兼任。地方における高等教育の発展にも貢献しました。また、2001年2月には新潟県の高齢者保健医療福祉計画協議会の座長を務めるなど、学術的な立場から実際の社会政策立案にも深く関わりました。2004年にも再度、新潟青陵大学の学長を務め、2005年3月に大学を退任しました。

業績

佐藤進の研究対象は、広範な社会問題に根差した法制度や政策に及びます。特に、労働協約、健康保険組合、年金制度、労災補償、高齢者福祉、社会福祉行財政など、現代社会の基盤を支える社会保障と労働に関する法分野を中心に研究を進めました。また、国際比較研究も行い、ILO条約やEEC（後のEU）の社会政策などにも言及しています。

その研究成果は多数の著作として結実しており、専門書から一般向けの解説書まで幅広く手掛けています。主な単著には以下のようなものがあります。

『アメリカ労働協約の研究 任意労働仲裁制度の実態と法理』勁草書房 (1961)
『日本の老齢保障』日本労働協会 (1969)
『社会保障の法体系 上』勁草書房 (1969)
『社会保障と市民生活』総合労働研究所 (1972)
『労働法と社会保障法との交錯』勁草書房 (1979)
『高齢者扶養と社会保障』一粒社 (1983)
『年金政策の中身とそのゆくえ マイ・ペンションを考える』信山社出版 (1998)
『エッセンシャル社会保障論』法律文化社 (2000)
* 『EU社会政策の展開』法律文化社 (2006)

また、多くの研究者と共同で著作を刊行し、関連分野の研究動向を牽引しました。代表的な共編著には、『労働者の災害補償』(1965年)、『社会保障法入門』(1972年)、『児童福祉法50講』(1976年)、『現代社会保障法入門』(1986年)、『介護保険法 法案に対する新たな提案』(1997年)などがあります。さらに、海外の重要な文献の翻訳も行い、国内の研究者や学生に新たな視点を提供しました。特に、アラン・ウォーカー他による『福祉大改革 イギリスの改革と検証』(1994年)の共訳は、当時の日本の福祉改革論議に影響を与えました。

栄誉

長年の学術研究と教育、社会への貢献が認められ、2003年4月には日本の勲章である勲三等瑞宝章を受章しました。これは、社会保障法学、労働法学の発展および社会福祉政策への貢献に対する国家からの高い評価を示すものです。

晩年

大学退任後も研究活動や著作を通じて、社会保障や高齢者福祉といった分野への提言を続けました。2009年4月9日、心臓発作のため83歳で逝去。その生涯は、激動の戦後日本における社会保障制度や労働法制の発展を見つめ、その法的・政策的な課題解決のために捧げられました。佐藤進が遺した膨大な研究成果は、今日においても関連分野の研究者や実務家に多くの示唆を与えています。

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