佐藤達夫 (法制官僚)

佐藤達夫（さとう たつお）

1904年5月1日、福岡県に生まれた佐藤達夫は、日本の法制官僚として、その生涯を国の制度設計に捧げました。1974年9月12日に70歳で亡くなるまで、法制局長官、人事院総裁を歴任し、日本の法制度の根幹を支えました。

生い立ちと初期のキャリア

内務官僚であった佐藤孝三郎の長男として生まれた佐藤達夫は、旧制中学明善校、第五高等学校を経て、東京帝国大学法学部政治学科を卒業しました。1928年には高等試験行政科試験に合格し、内務省に入省。地方局への配属から始まり、群馬県などの地方事務官を歴任しました。1932年には法制局へ移り、参事官として勤務を開始。以後、終戦まで法制局でのキャリアを積みました。

法制局での活躍

1941年、法制局第二部長心得に就任し、その後、専任法制局参事官、法制局第二部長を歴任。終戦後の1945年には法制局第一部長に就任し、日本国憲法の作成に深く関わりました。その後、法制局次長、行政調査部部員を経て、1947年には片山内閣で法制局長官に就任。法務庁法制局長、法務府法制意見長官、法制局長官と名称を変えながらも、1954年12月まで、7年半もの間、法制局長官を務めました。この間、日本国憲法の制定からその後の運用において、重要な役割を果たしました。

造船疑獄と指揮権発動

造船疑獄事件では、当時の法務大臣が佐藤栄作自由党幹事長の逮捕を延期するために指揮権を発動しましたが、この指揮権発動を発案したのは、当時法制局長官だった佐藤達夫であるとされています。この事件は、佐藤達夫の政治的な側面を示す出来事として知られています。

その後の活動

1955年1月には国立国会図書館専門調査員に就任。1961年には歌会始の召人を務めました。1962年9月からは人事院総裁として、人事院勧告の完全実施に尽力し、その職務中に亡くなりました。公務員制度の確立に大きく貢献した人物です。

多彩な才能

佐藤達夫は、法制官僚としての職務の傍ら、随筆や絵画にも才能を発揮しました。植物研究家としても知られ、多くの著作を残しています。著書には、政治や憲法に関するものだけでなく、植物に関するもの、絵画集など、多岐にわたります。彼の多才さは、その活動の幅広さからもうかがい知ることができます。

栄典

1974年9月11日には、勲一等・旭日桐花大綬章を受章。亡くなった翌日の9月12日には正三位を叙位され、従二位に叙位されました。さらに、9月13日には特旨を以て位一級追陛されるなど、その功績が称えられました。

主な著作

政治:
『国会のはなし』
『戦力・その他』
『日本国憲法誕生記』
『憲法講話』
『行政法』
『日本国憲法成立史』
『公務員制度いまと昔 - 佐藤達夫論稿集』
『国家公務員制度』
絵画:
『景色』
『花の絵本 - 画文集』
『花の画集』
『花の幻想』
『私の絵本 - 画文集』
『県の花 - 佐藤達夫画文集』
『定本花の画集』
『サトーズ・フローラ - 佐藤達夫花の画集』
植物:
『植物誌』
『植物誌 続』
『私の植物図鑑』
随筆:
『法律のミステーク』
『土曜日・月曜日 - 随筆集』
『法律の悪魔 - 佐藤達夫・法令随筆』
『ネパールの伊藤博文 - 佐藤達夫憲法随筆』
『自然の心』

家族・親族

父は内務官僚の佐藤孝三郎、妻は海軍少将・竹内寛の長女である雅子。従兄には林学者の佐藤敬二、従弟には美術評論家の河北倫明がいます。

まとめ

佐藤達夫は、法制官僚として日本の法制度の確立に大きく貢献しただけでなく、多才な人物としても知られています。その功績は、日本の歴史において重要な位置を占めています。

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