佐藤雅一 (考古学者)

佐藤 雅一

（さとう まさいち）

日本の考古学者、縄文研究者、郷土史家。1959年1月28日、新潟県三条市に生まれる。雪国特有の環境下における縄文文化の研究や、自身の提唱する「津南学」を通じた地域史の探求を専門としている。

来歴

佐藤氏は新潟県三条市で少年期を過ごし、早くから考古学への興味を抱いていた。自ら三条ジュニア考古学クラブを立ち上げるなど、その関心は並々ならぬものがあった。加茂暁星高等学校を経て、國學院大学文学部史学科に進学。大学で歴史学、特に考古学を専攻し、専門的な知識と研究手法を修得した。

大学卒業後、新潟県教育委員会埋蔵文化財課に嘱託として勤務し、文化財保護や調査の実務に携わる。1994年には新潟県津南町に活動の場を移し、町職員として教育委員会文化財部門に配属された。文化財専門員として、苗場山麓の開発に伴う町内各地の発掘調査を指揮・担当し、多くの遺跡の確認や記録を行った。この時期の経験が、後の研究活動の基盤となる。

主な活動と業績

津南町での長年にわたる文化財行政と研究活動を通じて、数々の重要な業績を挙げている。2004年には、農と縄文をテーマにした体験実習館「なじょもん」の開館に尽力した。これは、地域の文化資源である縄文遺跡や農耕文化を活かした体験型学習施設であり、現在も多くの来館者を集めている。

2009年には教育委員会の文化財班長に就任。さらに2013年からは文化財班長と兼任でジオパーク準備室の室長も務め、地域資源を活用した新たな取り組みを推進した。その努力が実を結び、2014年には苗場山麓ジオパークの認定に中心的な役割を果たした。また、2016年4月25日には、地域のシンボルである火焔型土器と雪国の暮らしに焦点を当てたストーリー「なんだコレは！信濃川流域の火焔型土器と雪国の文化」が日本遺産に認定される過程でも、その推進に多大な貢献を行った。

研究者としては、雪深い津南地域という特殊な環境下での縄文人の生活や文化、集落構造などに焦点を当てた研究を深化させている。特に、火焔型土器をはじめとする縄文土器研究においては、その編年や地域的多様性に関する分析を進めた。また、津南地域の郷土史家としても活動し、「津南学」を提唱。これは、考古学だけでなく、歴史、民俗、地理など多様な視点から津南地域の特性を総合的に探求しようとする学際的な試みである。

長年にわたる研究活動とその功績が評価され、2017年には長野県考古学会から第42回藤森栄一賞を授与された。これは、長野県および周辺地域の考古学研究に顕著な貢献をした研究者に贈られる権威ある賞である。

多くの学術論文や報告書に加え、『相吉遺跡』、『本ノ木』、『津南学叢書』といった著書も発表しており、その研究成果を広く共有している。現在は、新潟県津南町埋蔵文化財センター『うもれあ』準備室長として、新たな施設の立ち上げと地域における埋蔵文化財の調査・研究・活用を牽引している。

國學院大學兼任講師として後進の指導にあたるほか、三条市文化財保護審議会委員、NPOジョウモネス・ジャパン理事、雪国観光圏雪国文化研究WG座長など、多方面で文化財保護、地域振興、研究推進に貢献している。

主な著作・論文・報告書（一部）

• - 『相吉遺跡』
• - 『本ノ木 ＜津南学叢書 第30輯＞』
• - 『信濃川中流域における更新世末から完新世初頭の人類活動』
• - 『先史考古学論集』
• - 『隆起線文系土器群』
• - 『津南学叢書』
• - 『新潟県津南段丘における石器群研究の現状と展望』
• - 『新潟県における中期中葉から後葉の諸様相』
• - 『新潟県卯ノ木泥炭層遺跡の発掘調査による縄文文化形成期の古環境と生業の研究』
• - 『上原E遺跡』、『本ノ木遺跡・卯ノ木南遺跡・家の上遺跡』、『堂屋敷遺跡』など多数の遺跡発掘調査報告書。

関連事項

国宝火焔型土器
苗場山麓ジオパーク
日本遺産「なんだ、コレは!」信濃川流域の火焔型土器と雪国の文化
北海道・北東北の縄文遺跡群

これらの事項は、佐藤氏の専門分野や活動と密接に関連しており、その研究や貢献の広がりを示している。

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