佐賀市立勧興小学校

佐賀県佐賀市成章町に所在する佐賀市立勧興小学校は、地域に根差した歴史と伝統を誇る公立小学校です。

沿革と歴史

本校の源流は、江戸時代に佐賀藩が開設した藩校「弘道館」に遡ります。天明元年（1781年）に設立された弘道館は、天保11年（1840年）には北堀端へ移転・拡充され、「蒙養舎」として藩士の子弟教育を担いました。明治維新による学制改革で一時廃校となりますが、明治7年（1874年）7月に「勧興小学校」として新たな歩みを始め、再興を果たしました。

その後、小学校令の改正に伴い、尋常科・高等科を設置する「尋常勧興小学校」「勧興尋常高等小学校」と名称を変遷させ、明治32年（1899年）には高等科を廃止し「勧興尋常小学校」となりました。大正2年（1913年）に現在の敷地に校舎が完成し、翌年移転を完了。太平洋戦争中の昭和16年（1941年）には国民学校令により「佐賀市勧興国民学校」となります。

戦後の学制改革により、昭和22年（1947年）4月1日、現在の「佐賀市立勧興小学校」として再出発しました。同年6月には火災で校舎の大半を焼失する苦難に見舞われますが、保護者や地域の支援を受けて復興が進み、昭和25年（1950年）に給食室、昭和26年（1951年）に講堂兼屋内体操場、昭和27年（1952年）には復興記念式典が挙行されました。その後もプールの完成（昭和33年）、体育館の新築（昭和41年）など施設整備が進みます。

創立100周年を迎えた昭和49年（1974年）には記念式典を挙行し、校旗を制定。昭和50年代には新校舎の建設が相次いで行われました。平成元年（1989年）には佐賀市制100周年を記念したタイムカプセルを埋設（令和元年開封）。地域との連携も積極的に行われ、「勧興まつり」の開催や、「勧興ふれあい大運動会」などが行われています。

近年では、平成28年（2016年）から北校舎、続いて管理棟の耐震工事および大規模改修工事が実施され、学習環境の安全性が向上しました。そして、令和6年（2024年）には創立150周年という記念すべき年を迎えました。

校名の由来

学校名「勧興」は、前身である弘道館の蒙養舎で使用されていた経書の一つ、『礼記（らいき）』の「王制篇」にある「勧功興学（こうこうきょうがく）」という言葉に由来しています。「功（成果を挙げること）を勧め、学（学び）を興す」という意味が込められており、学問や物事への積極的な取り組みを奨励する精神が反映されています。この「勧功興学」の書は、本校出身で政治家として活躍した佐藤尚武氏によって書かれ、現在も学校に大切に所蔵されています。

教育の精神と象徴

本校の教育目標を示す「勧興魂」には、「勉強はベストをつくし、運動はくたくたになるまで」という力強い言葉が掲げられています。これは、何事にも目標を持ち、限界まで努力することの大切さを教える、子どもたちへのメッセージです。

校章は、2羽の鳥が背中合わせに配された図案を背景に、中央に学校名の頭文字である「勧」の字をあしらったデザインです。校歌は原田種良氏が作詞、陶山聡氏が作曲を手がけ、全3番の歌詞すべてに校名「勧興」が登場し、学校への愛着と誇りを歌い上げています。

校舎の玄関前には、学校のシンボルとも言える樹齢およそ200年と推定されるソテツがあります。このソテツは、かつて北堀端にあった校舎の玄関前に植えられていたものが、大正2年（1913年）に現在の場所へ校舎が移転する際にともに移されたものです。弘道館時代から存在したとも言われ、長い歴史の生き証人として子どもたちを見守り続けています。

学びの環境と地域連携

多様な教育ニーズに応えるため、本校では特別支援教育にも力を入れており、知的障害、情緒障害、病弱に対応する学級が「つぼみ」「わかば」「みどり」といった名称で設置されています。

通学区域は佐賀市の中心市街地を含む広範囲に及び、中央本町、中の小路、松原、天神、成章町、唐人、駅南本町、愛敬町、八幡小路、白山、大財、呉服元町、駅前中央の一部の町・番地から児童が通学しています。卒業生は佐賀市立成章中学校へ進学します。

アクセスと周辺環境

交通アクセスは良好で、JR九州の佐賀駅が最寄りの鉄道駅です。また、佐賀市営バス、昭和バス、祐徳バスの「白山」停留所や、佐賀市営バスの「成章中学校西」停留所も近く、バス路線も充実しています。主要道路としては国道264号線や佐賀県道29号佐賀停車場線が利用でき、市街地中心部という立地ながら、各方面からのアクセスに恵まれています。

学校の周辺には、佐賀市立成章中学校が隣接するほか、佐賀県社会福祉協議会、佐賀市立勧興公民館、佐賀市青少年センター、佐賀天神郵便局など、公共施設が多く点在しており、教育環境として恵まれています。

著名な関係者

本校からは多くの著名な人材が輩出されています。主な出身者としては、政治家として外務大臣や参議院議長を務めた佐藤尚武氏、洋画家の山口亮一氏、政治家の岩田和親氏などが挙げられます。また、学校の創設期においては、弘道館出身であり本校の初代校長として17年間勤めた千住虎吉氏が学校の礎を築きました。

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