佐野太河

佐野 太河

佐野 太河（さの たいが）氏は、1998年11月16日に静岡県浜松市で生まれた、右投げ右打ちの元プロ野球投手です。特異なナックルボールを最大の武器として、独立リーグの舞台でプロキャリアを歩みました。

経歴

プロ入り前

佐野氏が野球を始めたのは、小学校2年次、地元浜松市のソフトボールチーム「北クラブ」に加入したのがきっかけです。浜松中部中学校へ進み、硬式野球へと転向。浜松南リトルシニアでプレーし、当初は内野手として研鑽を積みました。この頃から、チームメイトに教えられ、遊び半分でナックルボールを投げることが時折あったといいます。

浜松南高校に進学後、2年生の秋から投手へ転向しました。投手となった後も、時折ナックルボールを見せ球として用いていたそうです。高校時代は控え投手としてベンチ入りを果たしましたが、3年生夏の第98回全国高校野球選手権静岡大会では初戦敗退を喫し、甲子園出場は叶いませんでした。

高校卒業後、佐野氏は金融業界への進路を希望し、千葉大学法政経学部法政経学科へ現役で合格します。大学では千葉県大学野球連盟3部に所属する硬式野球部に入部。当初はプロ入りを意識していませんでしたが、大学入学を機に、ティム・ウェイクフィールドやR.A.ディッキーといったナックルボーラーの投球映像を参考に、本格的にナックルボールの習得を目指し始めました。特に、2年生の時にテレビ番組『球辞苑』で紹介されていたウェイクフィールドのボールの握り方を真似たところ、ナックルボールの精度が飛躍的に向上したといいます。そして、3年生になる頃には、練習やキャッチボールを含め、全球ナックルボールで投げるようになりました。

SNSに自身のナックルボールの投球動画を投稿したことがきっかけで、「ナックル大学生」として注目を集め、これが自身の発奮材料となり、「色々な野球の世界を見てみたい」という新たな動機から、より高いレベルでのプレーを目指すようになります。独立リーグのトライアウト受験のため、3年生の秋に硬式野球部を退部することを決断しました。

退部後、2019年11月2日にベースボール・チャレンジ・リーグ（BCリーグ）の関東合同トライアウトを受験しますが、一次テストで不合格となります。翌11月3日には四国アイランドリーグplusの関東開催トライアウトを受験し、一次テストは突破しましたが、11月17日の二次テスト後の球団からの指名には至りませんでした。しかし、11月7日にはこの年に初めて開催された「WorldTryout2019」の予選トライアウトに出場し、予選を通過して本選への出場権を獲得します。同月30日に開催された本選では、全球ナックルボールで勝負に挑みましたが、第1試合では回転したボールを痛打され、一つのアウトも取れずに降板。第2試合にも登板し、安打を浴びながらも要所でダブルプレーを奪う投球を見せました。このトライアウトを経て、2020年から始動する北海道ベースボールリーグと、関西独立リーグの堺シュライクスからオファーを受け、最終的に堺シュライクスのオーナーである松本祥太郎氏の説得により、堺への入団を決めました。

関西独立リーグ時代

2019年12月25日、追加合格者として堺シュライクスへの入団が正式に発表されました。佐野氏は当時千葉大学に在学しており、単位に余裕があったため休学はせず、シーズン終了後に大学へ戻る予定でした。堺入団時には大学4年生となりますが、一般企業への就職活動は行わず、堺での活躍を通じてNPB球団からのオファーを得ることや、海外のトライアウト受験の準備を進めることを目標としました。

2020年2月からチーム練習に合流。3月17日のオープン戦で初の実戦登板を果たしましたが、2回で6失点と苦い経験となりました。しかし、シーズンが開幕すると、監督の大西宏明氏から開幕投手に抜擢され、6月13日の開幕戦で先発のマウンドに上がります。大西監督は当初3、4回での交代を想定していましたが、佐野氏は期待を上回る7回1失点の好投を見せ、プロ入り初登板で初勝利を飾る鮮烈なデビューを飾りました。

同年10月30日、自身の夢を叶えるために次のステージへ進みたいとのコメントと共に、堺からの退団が発表されました。

九州アジアリーグ時代

堺退団後、2020年11月7日に開催された、2021年より開幕する新たな独立リーグ、九州アジアリーグの入団トライアウトに参加。同年11月10日に火の国サラマンダーズへの合格が発表されました。九州アジアリーグを選んだ理由として、関西独立リーグよりも試合数が多く、福岡ソフトバンクホークスの三軍とも対戦できる点を挙げています。火の国での背番号は「6」となりました。

2021年4月10日、琉球ブルーオーシャンズとの交流戦で救援投手として火の国での初登板を迎えますが、3与四球、2被安打で3失点を喫し、1アウトしか取れずに降板。厳しいスタートとなりました。しかし、6月の試合から復帰すると、登板数は多くありませんでしたが、試合を重ねるごとに走者を出しながらも無失点や1失点にまとめる粘りの投球を見せるようになります。9月23日のホーム最終戦では熊本移籍後初の先発登板を果たし、5回2失点で勝利をあげました。特に9月は6試合に登板し、2勝、2ホールド、防御率0.69と安定した成績を残しました。

2022年シーズンは、3月26日の対大分戦で先発登板し、6回1/3を無失点に抑える好投でシーズン初勝利をあげました。以降も先発での起用が中心となりますが、5月22日にシーズン2勝目を挙げて以降は、5回を投げ切るのが難しい試合が続きました。8月6日の試合で敗戦投手となってからは救援投手として起用されるようになります。このシーズンの最終成績は18試合登板で2勝5敗、防御率6.23でした。シーズン終了後の10月12日、火の国サラマンダーズからの退団（任意引退）が発表されました。

九州アジアリーグ退団後

火の国退団後もメジャーリーグでのプレーを諦めず、アメリカ・アリゾナ州周辺で活動するトラベリングチーム「アジアンブリーズ」への参加を表明しました。しかし、2023年4月1日に自身のTwitterで現役引退を正式に表明し、野球選手としてのキャリアに終止符を打ちました。

選手としての特徴・人物

佐野氏の投球フォームはアーム式のオーバースローで、直球の最速は130km/h、そしてナックルボールは最速112km/hを記録しました。ナックルボールについては、佐野氏自身が「ほとんど無回転にできる」と語るほどの精度を誇っていました。大学時代の後輩捕手は、佐野氏のナックルボールについて「たまに襲ってくるようなボールが来るんです。それが一番、怖い。捕手はボールを基本的には下から見ているので（捕球寸前で）急に浮いてきたりする。その対策もしなくてはなりませんでした」と、その予測不能な変化について証言しています。一方で、火の国サラマンダーズの投手ゼネラルマネジャーを務めた馬原孝浩氏は「キャッチャーが捕れない球を投げる。面白いと思う」と評価する一方、「棒球になることがある」と、変化しないストレートのような球になってしまう課題も指摘していました。

佐野氏は、ナックルボールの精度を磨けばプロの世界でも通用すると信じ、フルタイム・ナックルボーラーとして勝負することを目標としていました。将来的なメジャーリーグ挑戦を強く志していたことでも知られています。

好きなプロ野球選手には、自身と同じナックルボーラーとしてメジャーリーグで活躍したR.A.ディッキーを挙げています。また、好きな芸能人としてYouTuberのラファエル氏の名前を挙げていました。

詳細情報

背番号
4 （2020年 - 堺シュライクス）
6 （2021年 - 2022年 - 火の国サラマンダーズ）

※独立リーグでの年度別投手成績は、inputに詳細なデータが含まれていないため記載を省略します。ただし、2022年シーズン終了時の通算成績は input に記載がないため割愛。2022年シーズンの成績（18試合登板、2勝5敗、防御率6.23）は九州アジアリーグ時代の項目で言及済み。

関連項目

堺シュライクスの選手一覧
火の国サラマンダーズの選手一覧
千葉大学の人物一覧
浜松市出身の人物一覧

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