体操伝習所

体操伝習所

体操伝習所は、1878年10月に東京府神田区に設立された、日本初の体育教員養成機関です。この機関は文部省の直轄のもと、「専ら体育に関する諸学科を教授し、本邦に適した体育法を選定し、また体育学教員を養成する」ことを目的としていました。設立当初から今日まで、体操伝習所は日本の体育研究と教育において重要な役割を果たしてきました。

設立の背景

明治政府は欧米の教育制度を導入する中で、小学校や専門学校に体育を教科として位置づけましたが、当時の実情は名目だけとなり、具体的な内容や方法は確立されていませんでした。そのため、各学校では体育の授業が試行錯誤で運営されていました。特に、東京師範学校は、知識中心の教育に偏重しており、体育教員の育成が遅れていました。

この状況を打破するため、文部省は体操伝習所を設立しました。校長補の伊沢修二が主幹となり、1879年4月には授業を開始しました。アメリカ出身の医学士リーランドを教員として招聘し、日本人に適した「軽体操」を側面から導入。木製の器具を使用した体操が、当時の教育方針に沿った形で展開されました。

体操伝習所の役割と経過

設立から数年で、体操伝習所は約300名の卒業生を輩出し、彼らは全国の府県師範学校に体育教員として赴任しました。卒業生たちは、軽体操に関する専門書も多く出版し、近代的学校体育の全国的な普及に貢献しました。

1881年にリーランドが帰国した後は、坪井玄道が主任教員として指導にあたりました。坪井は、リーランドの方法論を受け継ぎ、『新撰体操書』を出版するなど、教育内容をさらに発展させました。その後も、文部省は体育教員の養成を進めるため、「歩兵操練科」や「兵式体操」の調査を依頼し、体育の国家主義的側面を強調しました。

体操教育の確立

1886年には体操伝習所が高等師範学校に改組され、その後も教育制度の中で重要な役割を果たしました。筑波大学体育専門学群の前身となる体系も、この体操伝習所からの流れを受け継いでいます。

また、体操伝習所の設立によって、日本における体育教育の枠組みが整理され、体育に関する思想や実践が整備されていくこととなりました。この影響は、その後の体育科教育やスポーツ活動にも大きな変化をもたらし、現代においてもその基盤が引き継がれています。

まとめ

体操伝習所は、日本の近代体育教育の礎を築いた重要な機関です。その設立によって、日本の教育制度における体育の位置づけが明確化され、運動を通じて人間の健全な発達を促進するための基盤が整いました。体操伝習所での教育や研究の成果は、いまだに多くの学校や教育現場で活かされており、日本の体育史における重要な章の一つとなっています。

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