何真 (元)

何真（かしん）

何真は、元末から明初の激動期を生きた軍人です。字を邦佐といい、広州東莞県を本貫とします。至治元年（1321年）に生まれ、洪武21年（1388年）に68歳で亡くなりました。

生い立ちと初期の活動

何真は、何叔賢と葉氏の間に生まれました。幼くして父を亡くし、母の手で育てられます。若い頃から学問と武芸に励み、特に撃剣を好んだといいます。元の至正初年には河源県務副使、後に淡水場管勾を歴任しますが、官を辞して故郷に帰ります。当時の元朝は混乱しており、各地で反乱が頻発していました。何真は、この混乱の中で自らの力を発揮していくことになります。

元末の反乱と活躍

至正14年（1354年）、東莞県で王成と陳仲玉が反乱を起こすと、何真は元帥府に事態を報告しました。しかし、元帥は賄賂を受け取っていたため、何真を捕えようとします。何真はこれを逃れ、居坭岡に拠って兵を挙げ、王成と戦いますが、一度は敗れます。その後、恵州で王仲剛が反乱軍の将・黄常と結託して挙兵すると、何真は黄常を撃破し、王仲剛を討ち取ります。この功績により、恵陽路同知・広東都元帥に任じられ、恵州を守備することになりました。

至正22年（1362年）、海賊の邵宗愚が広州を陥落させると、何真は兵を率いてこれを撃破し、広州を奪還します。その功績から広東分省参政、さらに右丞に抜擢されました。また、贛州の熊天瑞が水軍を率いて広州を攻めようとした際にも、胥江でこれを迎え撃ち、大雷雨によって敵船のマストが折れるという天恵もあり、勝利を収めました。広州の人々は、何真を頼りとするようになったといいます。

その後も何真は、かつて反乱を起こした王成を攻撃し、陳仲玉を討ちますが、王成は東莞県に立て籠もって抵抗を続けました。至正26年（1366年）、再び王成を包囲し、捕獲に成功した者には多額の賞金を出すと約束したところ、王成の奴隷が主を捕えて出頭します。何真は、約束通り奴隷に賞金を与えましたが、直後に釜茹での刑に処してしまいます。「主に叛く者はこうなる」と人々を戒めたことで、沿岸の反乱者たちはこぞって降伏しました。

当時、中原は混乱の極みにあり、嶺南は中原と隔絶していたため、何真に独立を勧める者もいましたが、彼はそれを受け入れず、元朝に度々使者を派遣して貢献を続けました。その結果、資徳大夫・行省左丞にまで昇進しました。

明朝への帰順とその後

洪武元年（1368年）、明朝の廖永忠が征南将軍として広東攻略に乗り出すと、何真は廖永忠の勧めに従い、印章や戸口、兵糧の資料を献上して降伏しました。廖永忠は、何真の帰順を朝廷に報告し、洪武帝は何真を賞賛しました。その後、何真は官僚たちを率いて廖永忠を迎え、自らも南京に入朝しました。江西行省参知政事、後に山東参政を歴任しました。洪武4年（1371年）には、広東に戻るように命じられ、旧部下たちを率いて山東に赴きました。洪武9年（1376年）に致仕しています。

洪武14年（1381年）、雲南遠征が始まると、何真は子の何貴と共に従軍し、軍の糧食補給を担当しました。この功績から山西右布政使に転じます。その後、再び何貴と共に軍を率いて広東に赴き、何貴は鎮南衛指揮僉事に抜擢されました。何真自身は、浙江布政使、湖広布政使を歴任し、洪武20年（1387年）に再び致仕し、東莞県伯に封じられ、世券を与えられました。翌洪武21年（1388年）に68歳で死去しています。

死後の悲劇

何真の死後、子の何栄が後を継ぎましたが、弟の何貴や何宏と共に藍玉の党として処刑されました。何真の弟である何迪は、自身にも禍が及ぶことを恐れて反乱を起こしましたが、官軍に討伐され処刑されました。

何真の生涯は、元末から明初という激動の時代を生き抜いた一人の武将の物語として、歴史に刻まれています。

参考文献

* 『明史』巻130 列伝第18

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