廖永忠

廖永忠（りょう えいちゅう）

廖永忠（1323年 - 1375年）は、元末から明初にかけて活躍した軍人です。無為州巣県（現在の安徽省巣湖市）の出身で、朱元璋に仕え、明の建国に大きく貢献しました。兄の廖永安も朱元璋に仕え、その勢力拡大に尽力しました。

生涯

廖永忠は、兄の廖永安や同志の兪廷玉、兪通海、兪通源、兪通淵父子、趙普勝らと共に巣湖で勢力を築き、1000艘もの水軍を擁していました。1355年、朱元璋が和陽にいた時、河を渡るための船がなかったため、廖永安らは朱元璋に服属を申し出ました。朱元璋は廖永忠に「富貴を望んでいるのか？」と尋ねましたが、廖永忠は「明主を得て戦乱を鎮め、名を歴史に残したい」と答え、朱元璋を大いに喜ばせました。これにより、朱元璋軍は水軍を手に入れることができました。その後、趙普勝は朱元璋の元を去り、反旗を翻します。

廖永忠は廖永安の副将として水軍を率い、采石や太平を攻略し、陳埜先を捕らえました。1356年には、兪通海、廖永安と共に蛮子海牙や陳兆先を撃破し、集慶に入城しました。その後、鎮江、常州、池州、江陰の海賊討伐にも功績をあげました。1358年、廖永安が張士誠に捕らわれたため、廖永忠がその職と軍を引き継ぎ、枢密僉院となりました。

1359年、兪通海と共に樅陽の水寨を攻め、趙普勝を打ち破って池州を回復しました。また、陳友諒が安慶を攻略した際には、水塞を破って安慶を奪還しました。江州攻略では、城が堅固であったため、船尾で橋を作り、これを天橋と名付けて城内に侵入し、攻略に成功しました。この功績により、中書省右丞に進みました。

1363年、南昌・安豊の救援に向かい、鄱陽湖の戦いに参加しました。陳友諒軍の張定辺が朱元璋の乗船に迫った際には、常遇春と共に張定辺に矢を浴びせかけ、これを撃退しました。また、兪通海らと7艘の船に葦などを積み、敵船団に火を放ち、数百隻を焼き払う活躍を見せました。この戦いで朱元璋軍の士気は大いに上がり、勝利に大きく貢献しました。

1364年、陳友諒の後を継いだ陳理討伐に参加し、陳理を降伏させました。朱元璋は廖永忠の功績を称え、『功超群将、智邁雄師』という八文字を記した牌書を授け、門に掲げさせました。その後、徐達に従って淮東を攻め、張士誠軍の迎撃を水寨で防ぎ、その間に徐達が淮東諸郡を攻略することに貢献しました。張士誠討伐では、徳清や平江を攻略し、中書平章政事に進みました。

1366年、朱元璋の命で、保護されていた韓林児を応天に迎える使者となりますが、その途上で韓林児の乗船が転覆し、韓林児は溺死してしまいます。この事件は、朱元璋が暗殺を命じたとする説もあります。

1367年、征南副将軍として湯和に従い、方国珍を討伐し降伏させました。その後、福州に侵攻し、1368年には同知詹事院事となりました。閩中諸郡を攻略し、延平で陳友定を破って捕らえました。征南将軍となり、朱亮祖を副将として広東を攻め、元の左丞・何真を降伏させ、広州を攻略しました。さらに、海賊の邵宗愚を捕らえて処刑し、広州の人々を大いに喜ばせました。その後、九真、日南、珠崖、儋耳の30余りの城を落とし、広西に進み、梧州や南寧、象州を降伏させました。廖永忠は民衆をよく慰撫したため、民からの支持は非常に高く、その恩恵を忘れないために祠が建てられるほどでした。

1369年、応天に帰還した際には、朱元璋自らが龍江まで出迎えました。その後、泉州、漳州を鎮撫しました。1370年には、徐達に従い北伐に参加し、チャガンノールで勝利を収めました。帰還後、徳慶侯に封じられ、1500石の食禄を与えられました。

1371年、征西副将軍として湯和に従い、夏討伐に向かいました。先発して旧夔州を攻め、瞿塘峡に進み、鉄鎖の橋を設けていた敵軍を、奇策によって打ち破りました。この功績によって、夏の君主・明昇を降伏させ、四川地方を平定しました。その功績は『平蜀文』に「傅一廖二」と記されました。1372年には、北征してカラコルムに到達し、1373年には倭寇を捕らえて応天に帰還しました。

しかし、1375年、朱元璋によって死を賜り、53歳でその生涯を終えました。

人物

廖永忠は、水軍を巧みに操り、数々の戦で勝利を収めた優れた軍人でした。また、民衆を思いやり、よく慰撫したため、民からの信頼も厚かったとされています。

参考文献

『明史』巻129 列伝第17
『明史』巻133 列伝第21

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