余大成

余大成（よ たいせい、生没年不詳）は、明代末期の官僚であり、字を「集生（しゅうせい）」、号を「石衲（せきどう）」と称しました。本籍は応天府江寧県（現在の江蘇省南京市一帯）です。

生涯

1607年（万暦35年）に科挙に合格し、進士の位を得て官僚としての道を歩み始めました。当初は兵部主事として職務に励み、その後、1625年（天啓5年）には兵部職方郎中へと昇進しました。

しかし、彼は政敵の失脚を画策し、大学士であった劉一燝（りゅう いちこう）の私的な書簡を暴露するという手段に出ました。この行為が原因で、彼は失脚することとなります。

1626年（天啓6年）には、時の権力者であった魏忠賢（ぎ ちゅうけん）に反抗したことで、官籍を剥奪され、故郷に帰らざるを得なくなりました。しかし、彼の運命はここで終わりませんでした。

1628年（崇禎元年）、彼は太僕寺少卿（たいぼくじしょうけい）として再び官界に復帰しました。さらに1631年（崇禎4年）には、右副僉御史（うふくせんぎょし）となり、山東巡撫（さんとうじゅんぶ）という重要な役職を任されることになりました。

山東巡撫としての彼の任務は、決して平穏なものではありませんでした。当時、白蓮教の乱が再発し、逃亡兵による混乱も発生していました。これらの問題に対し、余大成は有効な対処をすることができませんでした。さらに、孔有徳（こう ゆうとく）が反乱を起こすと、彼は病気を理由に数日間姿を隠してしまいます。

やむなく中軍の沈廷諭（しん ていゆ）と参将の陶廷鑨（とう ていりゅう）が防御に当たりますが、いずれも反乱軍に敗北しました。1632年（崇禎5年）1月、孔有徳はついに登州を陥落させ、登州総兵の張可大（ちょう かだい）は戦死、登萊巡撫の孫元化（そん げんか）や参議の宋光蘭（そう こうらん）は捕らえられてしまいました。余大成はかろうじて萊州へと逃げ延びました。

これらの失態により、彼は山東巡撫の職を罷免され、後任には徐従治（じょ じゅうじ）が任命されました。さらに、余大成は逮捕され、投獄された後、一兵卒として広東電白（現在の広東省茂名市電白区）へ流刑となりました。

電白へ向かう途中、東莞に立ち寄った際に、彼は冤罪で処刑された袁崇煥（えん すうかん）を祀り、その死を悼んで激しく嘆き悲しんだと伝えられています。その後、彼は赦免されて故郷に戻り、その地で生涯を終えました。

著書としては、『剖肝録（ほうかんろく）』と『四夢稿（しむこう）』が残されています。

余大成の生涯は、明末の動乱期における官僚の盛衰を象徴するものであり、彼の行動と運命は、当時の政治情勢や社会の混乱を映し出す鏡とも言えるでしょう。

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