徐従治

徐従治（じょ じゅうち、1572年 - 1632年）は、明代末期の官僚であり軍人です。字は仲華、号は肩虞と称しました。彼の生涯は、その並外れた才能と勇気、そして民への深い愛情に彩られています。

徐従治の誕生には、神秘的な逸話が残されています。彼の母親が、神人が庭で戈を舞う夢を見た直後に、彼が生まれたと伝えられています。この特異な誕生譚は、彼が後の人生で示す非凡な才能を暗示しているかのようです。

1607年、徐従治は進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。最初に任じられたのは桐城知県であり、その後、済南府知府、兗東副使へと昇進を重ね、沂州に駐屯しました。彼の行政手腕は、各地で高く評価され、民政を安定させ、人々の信頼を勝ち得ました。

1621年、白蓮教徒の徐鴻儒が鄆城で反乱を起こすと、事態は急変しました。反乱軍は鄒県、滕県、嶧県を次々と陥落させ、明朝の権威は大きく揺らぎました。この危機的な状況下で、徐従治は沂州に駐屯していたにもかかわらず、ただちに立ち上がり、反乱鎮圧のために動き始めました。彼は、捕らえた白蓮教徒を処刑し、元総兵の楊肇基を主兵事に起用するよう上奏しました。徐従治は、反乱軍の中枢を突く戦略を立案し、その卓越した軍事手腕により、徐鴻儒を滅ぼすことに成功しました。彼の功績は、明朝の安定に大きく貢献しました。

反乱鎮圧後、徐従治は右参政として済南を分守しました。その功績が認められ、右布政使に進み、江南の漕運を監督することとなりました。しかし、白蓮教徒の反乱が再発したため、山東巡撫の王惟倹は、徐従治を沂州に留め置くよう上奏しました。徐従治は、反乱軍を掃討しようとしましたが、巡按御史の意見と対立し、その結果、官を辞して故郷に戻りました。

1628年、徐従治は再び官界に復帰し、旧秩のまま薊州鎮の軍の補給を担当することになりました。当時、薊州鎮の兵士たちは、長らく食糧不足に苦しんでおり、反乱を起こし、順天巡撫の王応豸を遵化で包囲していました。この危機的状況に対し、徐従治は単身で兵士たちの前に乗り込み、彼らを説得しました。「3カ月分の食糧を支給するから、駐屯地に戻れ。拒否するならおまえたちを撃つ」という彼の言葉に、兵士たちは心を動かされ、反乱は収束しました。この行動は、彼の勇気と卓越した交渉能力を示すものとして、歴史に刻まれています。

徐従治の功績は高く評価され、左布政使に昇進しましたが、彼は再び辞職し、故郷に戻りました。1631年、彼は勅命により、飭武徳兵備として起用されました。孔有徳が山東で反乱を起こすと、徐従治は山東巡撫の余大成の命を受け、監軍を務めました。しかし、1632年1月、登州が陥落。余大成は官籍を剥奪され、徐従治は右副都御史として後任の山東巡撫に任命されました。

彼は登萊巡撫の謝璉と共に萊州に駐屯し、兵糧の調達にあたりました。「わたしが青州に駐屯していては、萊州の人心を繋ぎとめることはできない。萊州に駐屯してこそ、山東全体の人心を繋ぐに足りる」と述べ、自ら最前線に立つことで、兵士たちの士気を高めました。しかし、1632年4月、徐従治は戦場で砲弾を受け、負傷しました。その傷がもとで、同年、波乱に満ちた生涯を閉じました。享年61歳でした。崇禎帝は、その功績を称え、彼の嫡子に錦衣衛千戸の地位を授けました。

徐従治は、その卓越した軍事手腕と民への深い愛情、そして勇気と胆力によって、明朝末期の動乱期を力強く生き抜いた人物です。彼の生涯は、後世の人々に、勇気と希望を与え続けています。

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