白蓮教

白蓮教：中国歴史を彩る宗教と反乱

白蓮教は、中国で南宋時代から清朝にかけて存在した宗教です。その歴史は長く、複雑で、中国社会に多大な影響を与えました。元々は浄土教の結社として始まりましたが、時代とともに変貌を遂げ、最終的には幾度も反乱を起こす反体制集団へと姿を変えていきます。

白蓮教の起源と教義

白蓮教の起源は、東晋時代の廬山慧遠の白蓮社にまで遡ります。しかし、南宋の孝宗期に天台宗系の慈昭子元が再興したとされています。当初は、既存の国家や宗教勢力から異端視されていました。その理由の一つは、教団幹部が妻帯し、男女混淆の集会を開いていたことにあるとされています。

白蓮教の教義は、唐代の三夷教の一つである明教（マニ教）と弥勒信仰が融合したものと言われています。マニ教は7世紀に中国に伝来し、当時権勢を誇った則天武后も保護していました。白蓮教は、マニ教の宇宙観や救済思想を取り込みつつ、弥勒仏の出現による理想郷の実現を信じる弥勒信仰を融合させた独自の教義体系を確立していきました。

元代における白蓮教

元朝時代には、廬山東林寺の普度が白蓮教の教義をまとめ、布教の公認を得ることもありました。しかし、すぐに禁止令が出されるなど、その立場は不安定でした。この時代、白蓮教は呪術的な要素を取り込み、次第に革命的な思想を帯びていきます。そのため、何度も禁教令が出され、厳しい弾圧を受けました。

紅巾の乱と明朝

元末期の政治的混乱の中、白蓮教は勢力を拡大し、ついに韓山童を首領として大規模な反乱を起こします。この反乱は、参加者たちが赤い布を身につけていたことから「紅巾の乱」と呼ばれました。この反乱は元朝の支配を揺るがし、明朝建国のきっかけの一つともなりました。

興味深いことに、明の太祖朱元璋自身もかつて白蓮教徒であったと伝えられています。しかし、皇帝になると、白蓮教を危険視し、弾圧を行いました。朱元璋が白蓮教を単に利用していたのか、それとも信仰から転向したのかは、歴史の謎として残っています。

清朝時代の白蓮教

清朝になると、「白蓮教」という言葉は邪教のイメージが定着しました。清政府は、様々な民間宗教結社をまとめて「白蓮教」と呼び、弾圧しました。この時代、自ら「白蓮教」と名乗る宗教結社はなく、弾圧によって秘密結社化していきました。1796年には嘉慶白蓮教徒の乱が発生するなど、清朝末期までその影響は続きました。

清朝時代の白蓮教系宗教結社には、共通の宗教観が見られます。「無生老母」という根源的な存在への信仰と、終末思想です。終末の際に老母から派遣される救済者によって、覚醒した信者だけが救済されるというものです。この救済者は弥勒仏とされる場合が多いですが、阿弥陀仏とされる場合もあります。

白蓮教の遺産

白蓮教は、中国の歴史において、宗教、政治、社会運動と様々な側面を持っていました。その歴史は複雑で、様々な解釈が可能です。しかし、白蓮教が中国社会に与えた影響は大きく、その痕跡は現代中国にも残っています。 白蓮教の研究は、中国の歴史と社会を理解する上で非常に重要なものです。

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