余市臨港軌道

余市臨港軌道について

余市臨港軌道（よいちりんこうきどう）は、北海道余市町にかつて存在した軌道路線です。この路線は、地元の交通手段として重要な役割を果たしていました。本記事では、その設立から廃止に至るまでの歴史を振り返ります。

歴史的背景

余市の歴史は江戸時代に遡り、松前藩による和人とアイヌの交易が行われていました。その後、1869年に余市町が開基され、開拓使の出張所が設置。町は海に面した立地を活かし、果樹栽培や漁業で栄えました。1920年の国勢調査では町の人口は1万6800人に達し、町の発展が伺えます。

1902年には北海道鉄道線（後の函館本線）が開通し、余市駅が設立されましたが、駅が町の中心から遠く、利便性に欠けていました。この問題を改善するため、1926年に余市駅と市街地を結ぶ電気軌道の敷設特許が申請されました。この計画には、浜中から大川町へ向かう支線も含まれており、全長は約2.75km、1067mmの軌間が設定されていました。

余市電鉄の設立

1929年に軌道の特許が下付され、1930年には余市電鉄が設立され、事業が進められました。しかし、余市駅周辺の安全性に対する地元の不安から、当初の併用軌道が専用軌道に変更されることとなり、これがプロジェクトの進行を妨げる原因となりました。また、不漁や冷害、金融恐慌の影響も受け、資金集めに苦労しました。これを受け、余市電鉄は設計認可願を取り下げることになりました。

この状況を打破すべく、小島栄次郎工業所が新たに余市臨港軌道を設立しました。会社の名目上の本社は東京に置かれ、実質的には小島工業所と密接に関連していました。1933年5月10日、余市駅から浜余市までの2.75kmの軌道が開業します。

運行状況と廃止

開業時にはガソリン機関車とガソリン客車が使用され、1935年には冬期運行のために蒸気動車が導入されました。しかし、運行が続く中で乗客数は伸び悩み、最盛期でも年間乗客数は5万人余り、貨物量も5500トンに満たなかったため、冬季の営業休止が定められました。1940年には廃止が決定され、その後社名を余市臨港バスに変更し、バス事業へ転換しました。

バス事業への移行

余市臨港バスとしての新たな出発は1940年に始まり、余市駅前から浜中町、水産試験場前までの運行が開始されました。運行には複数の車両が採用され、便利な接続を提供しましたが、統合政策により、1943年には北海道中央乗合自動車に事業が譲渡されました。

総括

余市臨港軌道は、地域の交通インフラの一環として、また町の発展に寄与してきた歴史ある軌道路線でした。その短い運営期間の中で、多くの人々に利用されましたが、経済的な理由からの廃止により、地域の交通手段は大きな転換を迎えることとなりました。これによりバス事業が主流となり、余市町の交通網は新たな時代へと進化しました。

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