作業環境測定士

作業環境測定士とは

作業環境測定士は、労働者の職場環境における有害物質の状況を把握し、労働者の健康を守るための専門家です。労働安全衛生法および作業環境測定法に基づき、作業環境の測定計画の策定、試料の採取、そして分析を行います。この資格は、労働者が安全かつ健康に働ける環境を確保するために非常に重要です。

資格の種類

作業環境測定士の資格には、第一種作業環境測定士と第二種作業環境測定士の2種類があります。どちらも測定の計画やサンプリングを行えますが、分析業務の範囲に違いがあります。

第一種作業環境測定士: 鉱物性粉じん、放射性物質、特定化学物質、金属類、有機溶剤の5分野全てにおいて、詳細な分析を行うことができます。
第二種作業環境測定士: 簡易測定機器を用いた分析に限られます。簡易測定機器とは、検知管方式のガス濃度測定器や、特定の性能を持つ粉じん測定器などが該当します。

受験資格

第一種、第二種ともに、受験資格は共通です。大学や高等専門学校で理科系の課程を修了した者、または高等学校で理科系の学科を修了した者、学士の学位を有する者などが対象となります。さらに、1年から5年以上の労働衛生の実務経験も必要です。

具体的には、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

大学または高等専門学校の理科系課程修了後、1年以上の労働衛生実務経験
高等学校の理科系学科修了後、3年以上の労働衛生実務経験
大学または高等専門学校の理科系以外の課程修了後、3年以上の労働衛生実務経験
高等学校の理科系以外の学科修了後、5年以上の労働衛生実務経験
大学改革支援・学位授与機構により学士の学位を授与された者で、理科系課程修了者は1年以上、それ以外の課程修了者は3年以上の労働衛生実務経験
高度職業訓練修了者で、理科系学科修了者は1年以上、普通職業訓練修了者は3年以上の労働衛生実務経験
技能検定合格者で、理学、工学の知識を必要とするものは1年以上の労働衛生実務経験
8年以上の労働衛生の実務経験
その他、同等以上の能力を有する者として厚生労働大臣が認める者
技術士試験の第二次試験合格者
産業安全専門官、労働衛生専門官、労働基準監督官の職務経験者
高等学校卒業と同等以上の学力があり、5年以上の労働衛生の実務経験を有する者
防衛大学校、海上保安大学校などの卒業者で、1年以上の労働衛生実務経験を有する者

また、一定の条件を満たす者は、試験科目の免除を受けることができます。

試験について

試験は、第一種が8月下旬頃の2日間、第二種が8月下旬頃と2月中旬頃の計2回行われます。試験は、厚生労働大臣が指定する試験機関である、公益財団法人安全衛生技術試験協会が実施しています。

試験科目には、共通科目として労働衛生一般、労働衛生関係法令、デザイン・サンプリング、分析に関する概論があります。第一種には、選択科目として有機溶剤、鉱物性粉じん、特定化学物質等、金属類、放射性物質があります。

医師、歯科医師、薬剤師の免許を持つ者は、試験が全科目免除となり、登録講習の受講のみで資格を取得できます。また、診療放射線技師や環境計量士などの資格を持つ者も、一部の試験科目が免除されます。

登録講習

試験に合格した者は、作業環境測定士として登録するための必須講習を受講する必要があります。第二種の講習を修了しなければ、第一種の講習を受けることはできません。講習では、座学と実技を通して専門的な知識や技能を習得します。

第二種講習: 3日間で、労働衛生一般、デザイン・サンプリングの座学と、簡易測定法を含むサンプリングの実習を行います。
第一種講習: 各分野（鉱物性粉じん、放射性物質、特定化学物質、金属類、有機溶剤）ごとに2日間の講習が行われ、実習を通して分析方法を学びます。

登録

作業環境測定士として活動するためには、厚生労働省の作業環境測定士名簿に登録する必要があります。登録には、登録年月日、登録番号、氏名、生年月日、作業環境測定士の種別などの情報が必要です。

登録後には、作業環境測定士登録証が交付されます。この登録証を他人に譲渡したり、貸与することは禁止されています。また、作業環境測定士の資格を持たない者が、その名称を名乗ることも禁止されています。

欠格条項

以下のいずれかに該当する者は、作業環境測定士になることはできません。

心身の故障により、作業環境測定士の業務を適切に行えない者
過去に登録を取り消され、取消し日から2年を経過しない者
作業環境測定法や労働安全衛生法に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終えてから2年を経過しない者

作業環境測定士の役割

作業環境測定士は、労働者の健康と安全を守る上で、非常に重要な役割を果たしています。彼らは、職場の環境を適切に評価し、有害物質から労働者を守るための対策を講じます。この資格を持つ専門家の存在は、労働者が安心して働ける環境づくりに不可欠です。

その他

作業環境測定士に関する詳しい情報は、公益財団法人安全衛生技術試験協会や日本作業環境測定協会のウェブサイトで確認できます。また、労働衛生コンサルタント、衛生管理者、建築物環境衛生管理技術者など、関連する資格や専門家との連携も重要です。

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