使用 (法律)

使用

「使用（しよう）」という言葉は、広義には様々な文脈で用いられますが、その基本的な意味は、何かを役立たせるために用いる行為を指します。例えば、道具を使い、その機能を発揮させることなどがこれに該当します。これはしばしば「利用」とも言い換えられます。

一方、人が労務に就く状況で「使用」が使われることもあります。これは、賃金を支払ったり、あるいは特定の権限に基づき、他者を労働に従事させることを意味しますが、この文脈での「使用」は通常「雇用」という言葉でより詳細に論じられるため、本稿では主に、物や情報といった対象に対する「使用」、特に法律分野におけるその概念に焦点を当てて解説します。

法律における「使用」

法律の世界では、「使用」という言葉は、文脈によって特定の厳密な意味を持つことがあります。特に、民法、公法、著作権法といった分野では、その定義やニュアンスが異なります。

民法上の「使用」

民法において「使用」とは、物そのものを壊したり性質を変えたりすることなく、その物が本来持っている性質や機能に応じた方法で、自己の目的のために活用する行為を指します。これは、物の所有者が持つ権利、すなわち所有権を構成する重要な要素の一つです。

民法第206条は、所有者が法令による制約の範囲内で、自身の所有物を自由に「使用」する権利を持つと定めています。所有権には、この「使用」の他にも、物から利益を得る「収益」や、物を売却・譲渡・廃棄する「処分」といった権能が含まれますが、「使用」はこれらとは区別される概念です。民法における使用は、原則として土地や建物などの有体物を対象とします。

公法上の「使用」（公用使用）

公法、特に行政法における「使用」は、民法上のそれとは異なり、公権力の行使として現れます。これは、特定の公共事業、例えば道路やダムの建設といった目的のために、事業者が他人の所有する土地に対して使用権を行使することを指します。

この場合の「使用」は、所有者の意思に関わらず、公共の利益のために個人の財産権を制限する側面を持ちます。そのため、民法上の自由な使用権とは区別され、「公用使用」とも呼ばれます。これは土地収用などと同様に、行政機関が公共の必要性のために行う行政作用の一つとして位置づけられています。

著作権法上の「使用」

著作権法においても「使用」という言葉は用いられますが、ここでの「使用」は、他の法律分野や一般的な意味とは大きく異なります。

著作権法において「使用」は、単に著作物を個人的に読んだり、見たり、聞いたりして享受する行為を指すニュアンスで使われることがあります。これは、著作物を複製したり、公衆に送信したり、上演したりといった、著作権法第21条以降に定められた著作権者の権利（いわゆる「支分権」）が働くような「利用」行為とは明確に区別されます。

著作権法上の「利用」にあたる行為は、原則として著作権者の許諾を得る必要がありますが、単に著作物を「使用」（享受）するだけであれば、通常、許諾は不要とされています。このように、著作権法における「使用」と「利用」は、その行為の内容と、権利者の許諾が必要か否かという点で、全く異なる概念として扱われます。

参考資料として、法令用語事典などがこれらの概念理解に役立ちます。また、「使用者責任」といった関連用語も存在しますが、これは主に雇用関係における責任を指すものであり、本稿で解説した法律上の「使用」概念とは文脈が異なります。

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