侍塚古墳

侍塚古墳について

侍塚古墳（さむらいづかこふん）は、栃木県大田原市に位置する重要な古墳であり、二つの区画、すなわち上侍塚古墳と下侍塚古墳から構成されています。この古墳は、1951年6月9日に国の史跡に指定され、価値ある文化財としての位置づけを受けています。将来的には、2025年5月2日より大田原市が文化財保護法に基づく管理団体として任命される予定です。

古墳の位置と周辺の遺跡

侍塚古墳は上侍塚と下侍塚の2基から成り、上下の古墳の間には800メートルの距離があります。古墳の形状は前方後方墳であり、上侍塚古墳は全長114メートル、下侍塚古墳は全長84メートルに達します。上侍塚古墳は、栃木県内で足利市の藤本観音山古墳に次いで2番目に大きな古墳として知られています。また、これら両古墳は葺石が認められ、墳丘の周囲には周濠の痕が残っています。古墳の築造時期はおそらく4世紀後半とされます。

那珂川の右岸に位置する段丘には、他にも多くの古墳が集まっており、上侍塚古墳の北側には上侍塚北古墳が、下侍塚の北側には侍塚古墳群が存在します。この古墳群は8基から構成されており、その内訳は前方後円墳1基、円墳6基、方墳1基となっています。

徳川光圀による発掘調査

この古墳は、江戸時代に徳川光圀の命により発掘調査が行われたことで名を馳せました。光圀は天和3年（1683年）、那須郡の庄屋から贈られた著書『那須記』に記された古碑に興味を持ち、上侍塚古墳および下侍塚古墳の調査を決意しました。国宝に指定されている那須国造碑は、下侍塚古墳から500メートルの距離にある笠石神社の神体として有名です。

光圀の発掘は元禄5年（1692年）に実施され、その結果は大金重貞によって『湯津上村車塚御修理』という記録に残されています。上侍塚古墳の後方部中央を深く掘り下げたところ、石釧や管玉、鉄鏃などの出土物が発見され、それらの下には粘土でできた埋葬施設があったことが示唆されています。一方、下侍塚古墳については同じく中央を掘り下げたところで遺物が見つかったものの、その詳細は記録に残されていませんでした。

出土品の中には、上侍塚古墳からは銅鏡や鉄刀の破片、下侍塚古墳からは鉄斧や壺などが含まれています。これらの遺物は、当時の古代人の生活や信仰を知る手掛かりとなります。光圀は出土品を記録した後、元の状態に埋葬し、さらには墳丘の保護として松の植樹を行いました。この活動は、現代の文化財調査や保護の先駆的なものであったと評価されています。

近年の活動と景観維持

下侍塚古墳については、1975年に周辺調査が行われており、葺石や土器の一部が確認されました。そして2021年1月19日、栃木県は再発掘の計画を発表し、古墳の調査や保護を更に進める意向を示しています。

しかし、墳丘を覆っていたアカマツは松食い虫の被害が深刻化しており、2025年（令和7年）3月には25本の松が文化庁によって伐採されました。その後、大田原市は文化庁に管理団体としての指定を申し出、2025年5月2日には正式に管理団体として任命されることになっています。これにより、侍塚古墳はさらに保護され、次世代にもその存在が継承されることが期待されています。

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